暴走族のリーダー格であった17歳の少年が集団暴走行為（道路交通法違反）で逮捕され、少年の父親が当事務所の弁護士に依頼し、少年の付添人に選任された。

少年は暴走族のリーダー格であったため、本件が解決しても再びメンバーから声がかかって迷惑行為や非行を起こしてしまうおそれが十分にあった。そこで、少年の母親に指導して、遠方の親戚にしばらく少年を預かってもらうようにしてもらい、少年の叔父に少年を引き取ってもらった。一方、少年はバイクを処分することに未練があったため、バイクを所有したままだと同様の迷惑行為等をしてしまうおそれがあった。弁護士は、少年に対し、「これまで暴走行為によって近隣住民に迷惑をかけてきたのだから、きみ自身も痛みを味わう必要がある」と強く説得して、バイクの所有を断念させた。他方、少年の腕には大きな傷痕があり、これも原因となっていじめに遭って登校拒否となっていたことが分かった。弁護士は、少年がこの傷痕を気にするあまり、自らの殻に閉じこもって現実逃避をしていることも非行の一因になっていると考えて、以下のように諭した。（１）自分が思っているほど他人は少年の腕の傷痕を気にしていないものだ。（２）今後の人生を真面目に考えるならば傷痕を隠す必要はない。（３）真剣にきみのこと心配している母親のためにも傷痕のことを克服しなければならない。と強く説得した。このとき、少しでも傷痕に対する少年の考えが変わるよう、当時ベストセラーとなっていた障害者の生活体験のことが書かれている本を差し入れた。数日後、弁護士が少年と面会したところ、少年は半袖シャツに短パン姿で現れ、腕の傷痕を堂々と晒すようになっていた。少年によると、弁護士が差し入れた本を読み終えて傷痕に対する考えが変わり、腕を隠す必要はないと気がついたとのことであった。