この事例の依頼主
40代 女性
親から相続した土地を、時間貸しの駐車場として経営していた女性から、隣家との境界争いでもめていると来所された。隣家は築50年を過ぎた古屋である。お互いの親の世代から大きなトラブルもなく暮らしていたが、双方の土地境界が判然としていなかった。最近になって、隣家の所有者が土地建物を売却をしようとしている。事情を知らない第三者が隣人になったときのことを考えると不安なので、境界を明確にしたいと申し出たが、一向に耳を傾けてくれない。どうしたらよいかとの相談であった。
そもそも、土地の境界が曖昧なまま買い手が付くのかと疑問に思ったが、当職に相談してまもなく、なんと買い手が現れ、新所有者が引っ越しをしてきた。登記簿謄本を取り寄せたところ、登記も済ませている。さらに驚いたことに、現地を見に行ったところ、隣家の建物の一部が、相談者の土地まではみ出していることが判明した。単なる地境争いを超えて、越境物の撤去も解決が必要となった。本来は、元の所有者の責任であり、新所有者は被害者的な側面もあるが、そうも言っていられない。新所有者と交渉をしたが、ローンを組んでリホームもしなくてはいけないし、越境物の撤去や土地境界の測量費用まで出す余裕はないと取り付く島もなかった。そもそも依頼者の土地は、四方の境界が不明確であり、売却時等いずれ土地境界は明確にする必要がある。そこで、土地の境界に関する測量を依頼者が自費で実行することをお薦めした。当初は渋っていたが、良いチャンスであると説得し、測量を実施した。その上で、隣家に赴き、土地の境界はこちらの費用で解決したのだから、越境物については、そちらで責任を持って処理してもらいたいと申し入れた。幸い、リホーム前であったので、若干の費用増加で対応できることがわかり、無事隣家所有者に越境物の撤去工事を実行してもらった。結果として、相談者の土地は、全方向で境界が明確になり、隣家の新所有者ともよい近所付き合いができるようになった。
当初の古屋の隣家との土地境界争いから、思わぬ方向に紛争が拡大してしまった。隣家がもともと越境物を抱えていることに気付かず、かつ地境もはっきりしないうちに売却されてしまったこと自体が誤算であった。隣家の新所有者がリホーム工事をする予定であったこと、他の地境も十分に確認できていなかったという偶然が重なって、結果オーライの解決となった。まじめに地道にやっていると、時には、このような好運な結末も訪れるのかと、自分で感じ入った案件でした。