犯罪・刑事事件の解決事例
#IT・通信 . #人事・労務

【女性社員からのセクシュアルハラスメントの相談を円満に解決】

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中山 泰章 弁護士が解決
所属事務所日本橋法律特許事務所
所在地東京都 中央区

この事例の依頼主

年齢・性別 非公開

相談前の状況

【事案は抽象化しています】依頼者様は,IT企業の人事部の次長(A次長)。営業部の20代の既婚の女性(X子さん)が上司に当たる同じ営業部の40代の既婚の男性管理職(Y男さん)から,1対1での夕食に何度も誘われるなどして困っている,という連絡が本人から寄せられている,ということで御相談に見えました。X子さんのお話では,Y男さんからしばしば「二人で夕食に行こう。」と誘われたので,一度だけ夕食に付き合ったところ,「LINEを交換しよう。」,「映画に行こう。」と誘いがエスカレートしているとのこと。X子さんは,LINEは,専らママ友との連絡に使っていて男性と交換するのに抵抗を感じていて,いろいろ迷った末,人事部に相談したそうです。A次長としては,Y男さんが営業部で実績もある管理職なので慎重に対応したい,とのことでした。

解決への流れ

まず,改めて顧問会社の就業規則を拝見すると,セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントに関する規定がなかったので,一般的な規定を提示させていただき,就業規則の改定及び周知の手続と労働基準監督署への届出を進めていただきました。並行して,A次長には,X子さんから,録音の了承を得て,より詳細な事情を聴いていただきました。それによると,Y男さんは,X子さんが一度しか夕食に付き合ってくれず,その後も,何かと理由をつけて誘いを断るようになってからは,X子さんに対する態度がだんだん冷淡になり,X子さんも働きにくくなっていると感じているそうでした。そこで,就業規則も改定されたので,私から,Y男さんを含む会社の取締役,監査役及び管理職の方を対象としたセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントの研修をさせていただきました。題材は,裁判の事案を使用しました。その結果,Y男さんのX子さんへの誘いは,いったん,収束しました。ところが,2か月後,また,X子さんがA次長にY男さんの件で相談をしてきました。そこで,今回は, X子さんからだけでなく, Y男さんからも事情を聴くことにしました。もちろん,了承を得てやりとりも録音しました。結論としては,Y男さんは,X子さんが自分に笑顔で親切に対応してくれるので(他の方々にもそうなのですが),好意を抱かれていると錯覚し,何度も食事に誘い,だんだんエスカレートしてしまったとのことでした。判例を題材にした研修を受けて自分の言動が気になったとのことですが,やはし,X子さんに好意があり,また誘ってしまったそうです。Y男さんには,A次長から口頭で同じことをしない旨を確認していただき,X子は,別の事業所へ異動されました。

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中山 泰章 弁護士からのコメント

セクシュアルハラスメントは,職場における上司と部下という上下関係において発生することが多く,上司は,部下からの笑顔や親切な対応を自身への行為と錯覚してしまい,Y男さんのように食事にしつこく誘うなどのセクシュアルハラスメントを知らず知らずのうちに行ってしまうことがあります。もちろん,権限を濫用して意図的にセクシュアルハラスメントを行う行為はいけないのは,もちろんですが,最近は,悪意のないないセクシュハラスメントが起きてしまったという会社からの相談も増えてきています。セクシュアルハラスメント,パワーハラスメント,マタニティハラスメント等の就業環境の悪化は,対応を誤ると訴訟にも発展し,会社のレピュテーションが毀損されかねない重大なリスク要因です。ハラスメントに限りませんが,リスクは芽のうちに摘み取るという意味でも,就業規則で「ハラスメント」の例を列挙するだけではなく,会社トップの宣言,弁護士等による定期的な研修や相談窓口の整備や活性化が欠かせない時代になってきていることを痛感しています。セクシュアルハラスメントについては,加害者になることが多い男性と被害者になりことが多い女性との認識のズレがよく指摘されるところですが,特に,男性管理職には,なかなか理解しにくいのが実情のようです。理解を深めるにあたっては,大阪大学大学院教授の牟田和恵先生の新書がとてもわかりやすく書かれていると思います。http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0696-b/また,絶版のようですが,都庁で,長年にわたって労働相談等を担当されてきたジャーナリストの金子雅臣さんの新書もお勧めです。https://www.iwanami.co.jp/book/b268815.html