この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
居酒屋で、たまたま居合わせた隣の席の客と口論になり、殴ってケガをさせてしまいました。早く釈放してもらいたいのですが、先日検察官から「勾留延長をする」と言われています。早期釈放してもらえないでしょうか。
解決への流れ
以前私が取り扱った事例をモデルにしています。捜査機関に逮捕され、引き続き10日間の勾留がなされた場合、検察官は10日以内に公訴を提起しないときは被疑者を釈放しなければいけません。これが刑事訴訟法の原則です。しかし、残念ながら原則通りにいかず、「やむを得ない事由があると認めるとき」であるとして、さらに10日間勾留延長がされることがしばしばあります。これに対して弁護人がどう争うかですが、「検察官に勾留延長請求をしないように働きかける」「裁判官に勾留延長請求をしないように働きかける」「勾留延長請求決定に対して準抗告をする」といった手法が考えられます。どのような手法をとるかは事案によりますが、重要なことは、具体的な捜査手順を意識して、現実の捜査と比較して、主張を述べることです。抽象論で「やむを得ない事由がない」などと主張しても意味はありません。モデルケースでは、残念ながら勾留延長がなされましたが、準抗告により勾留延長期間が短くなり、早期釈放されました。
最高裁判例によれば、「やむを得ない事由があると認めるとき」とは、事件の複雑困難(被疑者若しくは被疑事実が多数であるほか、計算複雑、被疑者関係人らの供述その他の証拠の食い違いが少なからず、あるいは取調べを必要と見込まれる関係人、証拠物等が多数ある場合等)、あるいは証拠収集の遅延若しくは困難(重要と思料される参考人の病気、旅行、所在不明若しくは鑑定等に多くの日時を要すること)等により、勾留期間を延長して更に取調べをしなければ起訴、不起訴の決定をすることが困難な場合をいう(最判昭和37年7月3日民集16巻7号1408頁)とされていますので、その場合にあたらないことを主張していく必要があります。この事例では、勾留延長後の勾留謄本も入手した上で、記載された延長理由が不当であることを説得的に論じました。その結果、10日間の延長は不要であるということで、期間が短縮されて早期釈放されました。