この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
飲酒運転で逮捕されたという事件でした。本人からの要請で警察署で面会しました。
解決への流れ
私が以前取り扱った事例をモデルにしています。本人は飲酒運転を認めていること、身元もしっかりしていることから、そもそも逮捕したことが正当か疑問のある事案でした。この件では別の弁護士も接見しており、検察官が勾留請求しないように弁解録取後に検察官と交渉するとか回答されたそうです。私は、ただちに警察官との面会を求めて、留置の必要性に関する国賠の最高裁判例の評釈を提出し、現行犯逮捕の適法性に疑義があることを述べて、早急に釈放するように求めました。その結果、検察官送致前に釈放されました。道路交通法違反では逮捕は例外という犯罪捜査規範219条の規定と、留置の必要性についての最高裁判例の存在を知っていたことがポイントになりました。(身柄拘束に関する注意)第219条 交通法令違反事件の捜査を行うに当たつては、事案の特性にかんがみ、犯罪事実を現認した場合であつても、逃亡その他の特別の事情がある場合のほか、被疑者の逮捕を行わないようにしなければならない。https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55870判示事項司法警察員による被疑者の留置についての国家賠償法一条一項所定の違法性の判断基準裁判要旨司法警察員による被疑者の留置は、司法警察員が、留置時において、捜査により収集した証拠資料を総合勘案して刑訴法二〇三条一項所定の留置の必要性を判断する上において、合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて留置したと認め得るような事情がある場合に限り、国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受ける。
弁護士でも知らない人がいるのですが、実は逮捕された後に警察は「留置の必要性」を検討しており、「留置の必要性」が消滅した場合には釈放すべきとされています。そこで、具体的な捜査の経緯を踏まえて釈放の交渉をした場合には、検察官送致前に釈放されることがあります。私は現行犯逮捕の事案では積極的に狙うようにしています。※犯罪捜査規範(司法警察員の処置)第130条3被疑者が留置されている場合において、留置の必要がなくなつたと認められるときは、司法警察員は、警察本部長又は警察署長の指揮を受け、直ちに被疑者の釈放に係る措置をとらなければならない。4被疑者の留置の要否を判断するに当たつては、その事案の軽重及び態様並びに逃亡、罪証隠滅、通謀等捜査上の支障の有無並びに被疑者の年齢、境遇、健康その他諸般の状況を考慮しなければならない。昇任試験問題研究会編著『全訂版体系整理警察実務用語辞典 第8回全訂版』(日世社,2006年9月)291頁【被疑者留置の要否を判断する要素犯罪捜査規範一三○条三項は「被疑者の留置の要否を判断するに当たっては、その事案の軽重及び態様並びに逃亡、罪証隠滅、通謀等捜査上の支障の有無並びに被疑者の年齢、境遇、健康その他諸般の状況を考慮しなければならない」と規定している。(1)通常逮捕の場合は、誤認逮捕ではないか、逮捕状の有効期間内か、逮捕手続は、適正に履践しているか、緊急逮捕の場合は、逮捕要件を充足しているか、現行犯や準現行犯逮捕の場合は、その要件に当てはまっているか、時間を経過し、緊急逮捕すべきものでないか等である。(2)逃亡のおそれの有無については、住居、家族関係、職業関係、年齢、社会的地位、身柄引請人の有無等の身上関係、また、犯罪の軽重、前科前歴、執行猶予、余罪等の犯罪関係、被疑者の態度等である。(3)証拠隠滅のおそれの有無は、証拠が十分確保されていない。目撃者や参考人等の取調べが終わっていない又は未逮捕の共犯者があり、通謀や証拠隠滅のおそれがある等が一応考えられる。側その他諸般の事情は、高齢者(おおむね七十歳以上)か、年少者か、健康状態、被害者の感情、特に示談成立、被害回復、処罰を望まない等である。】