この事例の依頼主
60代 女性
相談前の状況
遺産として若干の預貯金と建物1棟及びその敷地が残された。相続人は2人であり,そのうちの1人が依頼者である。遺言がなかったのでこのままでは預貯金を半分ずつ分けた上で不動産についてはどちらかが取得して価格の半額を賠償するか売却して代金を半分ずつ分ける以外に解決方法はない。
解決への流れ
依頼者の主張をよく聞いてみると,もう一人の相続人に対して被相続人が相当額の援助をしていることが明らかになった。そこで,依頼者に関係資料を持参してもらったところ,被相続人の自筆でもう一人の相続人に対する援助の金額及び日付が記載されていると思われる書面が存在した。この書面を家裁での調停の場で証拠として提出したところ,調停委員会は援助分を特別受益と認めて依頼者が不動産全てを取得し,預貯金を相続人2人で半分ずつ取得する調停案を提示してくれた。
相続の案件では,被相続人が生前に残した古い資料を丹念に検討することが重要である。単に「親から○○○と聞いていた。」というだけでは調停や審判の場ではなかなか言い分を通すことは難しい。直接的な証拠ではなくても被相続人の預貯金の古い取引履歴などを調べていくと依頼者の主張と符合することがあるので,弁護士に相談することが肝要である。