この事例の依頼主
50代 男性
相談前の状況
被疑者は、横領事件の被疑者として逮捕され、勾留されている状態でしたが、被疑者の親からの依頼で、警察署に接見にいきました。事件の内容としては、被疑者は、知人からオートバイの売却を頼まれ、車種、年式から、100万円以上で売れると思い、その旨、知人に説明していました。しかし、野ざらしの状態で放置されていたため、オートバイの状態が悪く、知人からオートバイを預かり整備して、車検をとり直し、オークションで90万円で売却し、自身の工賃、部品交換代等として60万円を受領し、残額40万円を知人に渡したところ、知人に横領罪として被害届をだされ、警察官に逮捕されたという事案でした。
解決への流れ
被疑者から詳細に事件の経過について聴取をしたところ、問題となっているオートバイは、被疑者が整備する前は、不動車の状態だったところ、被疑者が長時間に及ぶ修理、整備、車検取得等の作業により、ようやく90万円の財産的価値を有するに至ったものと考えられました。実際に被疑者がした作業は、多岐にわたり、また、長時間の労務を提供しており、これを金銭的に換算したときに、被疑者の取り分として50万円というのは、さほど高い金額とは思えないものでした。そこで、事実関係を詳細に記載し、不起訴処分が相当である旨の意見書を作成し、検察官と面談して事情を説明したところ、検察官も内容について理解してくれ、結果、嫌疑不十分で不起訴となりました。
刑事弁護では、無罪推定の原則と言われていますが、実際に、捜査機関に逮捕勾留されてしまうと、一般の方は、被疑者は、実際に罪を犯しているのではないかと疑ってしまいます。ただ、中には、本当に、ゆえなく逮捕勾留されてしまう場合もあります。今回の事件もまさしくそれで、表面的な事実だけを見ると、横領にあたりうるようにも思えますが、事実を詳細に聴取すると、その表面的な事実は誤りであることが分かります。被疑者の言い分を吟味し、そのうえで被疑者を信じ、検察官を説得することができた今回の事件は、弁護士として、大変やりがいのある事件でした。