この事例の依頼主
40代 女性
1.相談者様は、本件依頼時40代の女性です。2.相談者様は、スマートフォンでホームページを見ていたところ無料鑑定のページを見つけてアクセスしたところ、鑑定師Aからメールで連絡をもらうようになりました。そのメール内容は途中で途切れており、全文を見るには本件占いサイト(以下「本件サイト」と言います。)にアクセスしなければなりませんでした。3.鑑定師Aから、鑑定を受ければ、3つの厄災(3つの注意)とは、①心の影響により、未来が不幸になる可能性、②財産を失う可能性、③深く傷つく裏切りに合う可能性であることを告げた上で、「5つの朗報」(=「5つの宝」)を受け取ることができれば3つの厄災を免れることができる、と述べました。相談者様は、鑑定師Aという鑑定師が存在し、相談者様が鑑定を続けなければ「3つの厄災」が降りかかるが、鑑定を受けることで「5つの宝」を受け取ることができれば「3つの厄災」を免れることができ、自らの望みが叶うと信じ、鑑定師Aの無料鑑定を受けることにしました。鑑定を受ける旨の返事をすると、鑑定師Aは、相談者様に一定の手順(たとえば、深呼吸して空中に鑑定師Aの指定した文字を書くなど)を踏んだ上で指定の言葉を返信するよう求めました。これが鑑定師Aのいう鑑定でした。鑑定を進めていった結果、本件サイトの無料期間が終わりました。そして、鑑定師Aは、鑑定を完了させなければ、相談者様が幸福な道をスタートする事は出来ないなどと告げてきました。そのように相談者様は、鑑定師Aやその後現れた鑑定師Bとのやり取りを継続し、本件サイトにポイント料金を、携帯電話会社のキャリア決済や電子マネー、クレジットカード決済及び相手方指定口座への振込の方法で支払ってしまいました。こうしたやりとりを毎日続けていくうち、鑑定師Aや鑑定師B氏から求められる返信回数は更に増えていきました。1通のメールに対して13回、20回、25回、30回、35回の返信を求められたりしたこともありました。相談者様が精神的に辛かったり、ポイントを追加購入できるだけの手元現金が無かったりして返信ができないときも、鑑定師Aや鑑定師B氏からは「どうか、この好機を逃さないでちょうだい。」、「貴方は、これまで“鑑定”という方法で幸せを掴むために努力をしました。これまでに積み重ねてきた努力は、途中でやめて幸福が訪れるものではありません。努力を積み重ね、積み重ね続けた結果に与えられるもの。」といった返信を急かす内容のメールが何通も届き、それを見て相談者様は焦燥感に刈られて、再びメールを返信するということが続いていきました。4.3か月近く連日メール返信を行い、それとともに多額のポイント購入を続けましたが、さすがに相談者様は不安に感じ、このことについて友人に相談し、メール返信を止めるよう勧められたため、相談者様は返信を止めました。結局のところ、相談者様は合計239万3500円ものポイントを購入してしまいました。5.その後、相談者様は本件事件について複数の弁護士に相談しましたが、被害回復はできないと強く言われてしまいました。そのような中で、相談者様は、当事務所の弁護士に相談したところ、自分がサクラサイト被害にあった認識し、本件事件を依頼しました。相談者様は、相談を受けて、自分が騙されたとわかり、相談者様が返信に費やした時間やお金、鑑定師の言葉を信じて努力しようとした気持ちが全て裏切られたとの思いで、大変深く傷付き、悔しくて涙が止まりませんでした。
1 弁護士は、相談者様と鑑定師Aと鑑定師Bやり取りをすべてPDFにしました。合計5000通のメールのやり取りを保存し、そのデータは4GBにも上りました。2.弁護士は相談者様が振り込んだ相手方名義の口座に対して、振り込め詐欺被害救済法による口座凍結を行いました。そして相手方に対して内容証明郵便通知書を送付して返金を促しましたが、相手方は25万円の返金にしか応じないと回答しました。弁護士はクレジットカードの決済代行会社に対してクレジットカード決済を取り消すように請求しました。そうしたところ、決済代行会社によってポイント料金の購入に利用した25万円分のクレジットカード決済全てが取り消し、相談者様の既払い金についてはクレジットカード会社を通じて返還されることになりました。弁護士は、携帯電話会社に対しては相手方による詐欺行為を理由として、携帯電話の利用料金と一緒に請求されている相手方ポイント購入分を解約して相談者様に対する請求を停止するように通知しました。しかし、携帯電話会社は、相談者様に対して請求を停止することは考えていない旨を告げました。相談者様は、このまま未払いの状態が続いて携帯電話を使えなくなると生活に支障をきたすこと考えて、ポイント料金を含む通信料を全て支払うことにしました。以上の経緯から、弁護士は、任意の交渉では自らの被った被害を回復できないと判断し、訴訟を提起することにしました。3.そして、弁護士は、相手方及び相手方代表取締役、振込先口座の金融機関、携帯電話会社を被告として訴訟を提起しました。その中で、相手方と相手方代表取締役には不法行為等に基づく損害賠償責任を追及しました。また、金融機関には債権者代位訴訟による相手方名義の預金請求を行いました。また、携帯電話会社に対しては、加盟店契約に基づいて相手方が携帯電話会社に対して有する売掛金について債権者代位に基づく請求を行うととともに、携帯電話会社も相手方に決済提供することで相手方と不法行為を共同して行ったことを理由とする損害賠償請求を行いました。4.訴訟が始まって間もなく、携帯電話会社が債権者代位に対応する形で相手方へ売掛金の額を回答してきました。そして、それがかなり大きな金額であったため、相談者様と相談の上、その債権の仮差押手続を行い。201万7608円を仮差押することができました。携帯電話会社はその金額を供託しました。5.その後、金融機関に対する文書提出命令等を通じて相手方の金銭の流れの不合理性(まっとうな商売をしていないこと)を解明するとともに、相手方に対して求釈明などを通じて鑑定師Aや鑑定師Bの存在や相手方との関係について不合理な弁解を多数引き出すことに成功しました。6.そして、こちらに有利な裁判での状況を作り出したうえで、相手方との間で、①現金15万円を和解の席上一括交付すること、②供託された金額とその利息についての還付請求権を相手方が相談者様の譲渡する和解を成立させ、15万円を席上で受領しました。その後、供託金等の還付手続を行い、201万8896円を受領することができました。最終的に239万3500円の被害金額に対して、241万8918円の被害回復をすることができました。
1.被害金額以上の回収ができてよかったです。相談者様にも喜んでいただきました。2.相手方だけでなく、金融機関や携帯電話会社を被告とし、金融機関や携帯電話会社が情報を出さざるを得ない状況を作り出した結果、仮差押手続を奏功させたり、有利な和解をしたりすることができました。3.ただ、一番大切だったと感じているのは、約5000通のメールを最初に保存したことです。この確固たる証拠があるからこそ、鑑定師Aと鑑定師Bがサクラまたはそれに類する存在であること、相手方の手口が悪質であることを動かぬ証拠で立証することができました。なお、通知を送ったあとに本件サイトに入ることができなくなっていたので初期のタイミングでメールを保存したことはとても有利に働きました。4.この約5000通ものメール数は相談者様が利用していた3カ月程度の期間になされたもので、相談者様がおかれた状況がいかに異常であったかを示していると思います。5.占いサイトというサクラサイトの変化種にも対応することができました。悪質業者との知恵比べは続きますが、地道に堅実に、ときに大胆に戦っていきたいと思います。