この事例の依頼主
女性
依頼主様の息子様(10代少年、高校生、前科前歴なし)が、自宅近隣の路上に於いて、通りを歩く女性を襲ってその体に触れる等の行為を繰り返したという、連続路上痴漢事件です。息子様は、被害女性らからの被害申告を受けて捜査を進めていた地元警察によって逮捕され、少年事件として立件されました。
お母様から相談を受けた当事務所の弁護士は、すぐさま息子様が留置されている警察署に赴いて息子様本人との接見を行いました。事件の内容を詳細に聞き取り、今後の手続きの流れについて丁寧な説明を行うとともに、捜査機関の取調べへの対応に際しての注意点もしっかりとお伝えしました。初回接見の状況をすぐさまご依頼主様にご報告したところ、息子様の意向も踏まえ、その後の対応について全面的な協力を当事務所の弁護士に依頼されました。弁護士は、息子様が大学受験を控える高校生だったことから、即座に学校対応とも協議を開始した上で、家庭裁判所の観護措置(一般に4週間に及ぶ鑑別所収容を伴います。)決定の回避に向けて動きました。担任の先生の他、教頭・校長先生とも直接対面で話をし、学校の協力体制の構築を進める傍ら、家庭裁判所に対しては、日常の息子様の生活状況・人となりの他、息子様にとって学業継続環境の確保がどれほど大きな意味を持つのかということを、具体的な資料を基に訴えました。結果、本件事案の内容からして、裁判所の職員も驚く中、観護措置決定は回避できました。しかし、その後も、別件について再逮捕を繰り返されるなど、捜査機関側の姿勢は厳しいものでした。弁護士は、都度果敢に立ち向かい、各逮捕に付随する勾留の決定を阻止するなど、身体拘束の回避に力を注ぎ続けました。その結果、当初は絶望的とも思われた、その年度での高校卒業も無事に果たすことが出来ました。弁護士は、身体拘束について強く争う一方で、息子様が今回の事件に真摯に向き合い、真の更生への一歩を歩み出すための取り組みも行っていました。家庭裁判所の調査官とも密に連携をとり、当初は少年院送致(しかも長期の収容)が強く見込まれた事案ながら、なんとか試験観察処分にたどり着き、その試験観察期間中も息子様に寄り添い続け、最終的に保護観察処分へと至りました。事案の内容からすると、身体拘束の回避の点についても、また最終処遇についても、異例の経過をたどった事件だったと言えます。少年事件の特性を理解し、随所でポイントを押さえた活動が出来たことが、こうした結果に繋がった理由だと考えています。
少年事件は、成人刑事事件の延長で対応できるものではありません。少年事件には少年事件特有の難しさ、対応のポイントがあります。身体解放活動一つとっても、それを実現するために捜査機関・裁判所に対して行う活動の内容には、成人刑事事件の場合とは異なる点が多々あります。また、少年手続きは複雑な構造をしており、普段刑事事件を手掛けている弁護士でも、少年事件の経験が浅いと、その対応に苦慮し、本来とるべき手・とれば効果があったかもしれない手を看過してしまうといったことが少なくありません。さらに、一番大切なことは、少年が「生きづらさ」を感じることなく成長の歩みを進め、真の更生を果たすことです。そのためには、少年事件に携わる弁護士として、単に法律上のアドバイザーにとどまるのではなく、少年の目線に立って少年特有の心理状態を理解し、心と心で少年に向き合う必要があります。私は今後も、少年事件に携わるうえで求められる見識・技能の習得に日々努め、少年たちの更生のお手伝いを全力で行っていきたいと思います。