この事例の依頼主
女性
相談前の状況
依頼者のご子息(会社員,前科前歴なし)が通勤経路の電車内で強制わいせつ事件を起こしてしまったケース。ご本人は目撃者に取り押さえられ,駆け付けた警察官により現行犯逮捕されていました。
解決への流れ
依頼者は,ご子息が長期間拘束されることにより,勤務先を解雇されてしまうことを心配されていました。依頼を受けた弁護士は,直ちに検察官へ連絡をとり,被害者女性に謝罪と被害弁償を行いたいこと,弁護士限りで連絡先を聞きたいことを伝えました。検察官から被害者女性の連絡先を聞いた後は,弁護士から直接に連絡を行い,示談の交渉に移行しました。被害者女性は加害者男性と再び顔を合わせてしまうことを危惧されていたため,弁護士はご本人と接見し,犯行現場を避けた通勤経路を模索しました。その結果,単に謝罪と被害弁償をするにとどめず,現場となった路線を利用しないことを誓約することで,被害者女性との示談を締結することができました。検察官は被害者女性との示談締結を考慮し,男性は釈放されて不起訴処分となりました。早期に釈放されたことで,男性は勤務先を解雇されることも免れました。また、事件後、依頼者様から下記のようなお言葉を頂戴いたしました。「担当弁護士に迅速な対応をしてもらえて大変感謝しています」
電車内での痴漢事件は多くが迷惑防止条例違反となりますが,今回のケースのように,より重い強制わいせつで逮捕されてしまうこともあります。条例違反と異なり,強制わいせつは罰金刑が定められていないため,不起訴になるか正式裁判となるかのいずれかのみです。それゆえ,示談の締結ができない場合,正式裁判を回避することが困難になってしまいます。痴漢,強制わいせつ事件の示談交渉にあたっては,被害者の不安を取り除くことも,非常に重要です。被害者,加害者に面識がない場合,通勤,通学経路を変更することによって,被害者と顔を合わせてしまうリスクを最小限に抑えることが可能になります。強制わいせつ罪は平成29年の刑法改正により,被害者の告訴がなくても検察官が起訴処分を決定することができるようになりました。しかし,示談の成否や被害者の意向が起訴,不起訴を決定するうえで重要な要素であることに変わりはなく,弁護士を通じて被害者への真摯な謝罪,弁償を行うことは依然として重要になります。