犯罪・刑事事件の解決事例
#医療過誤

出産時の医療過誤により胎児死亡

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川上 満里奈 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人ALG&Associates札幌法律事務所
所在地北海道 札幌市北区

この事例の依頼主

年齢・性別 非公開

相談前の状況

弁護士法人ALG&Associates大阪法律事務所で取り扱った、産科における出産時の医療過誤事件です。相談者は、自然分娩を予定され、陣痛後、自然分娩を試みましたが、胎児の大きさが想定より大きかったのか、自然分娩がむつかしいとの判断で、医師が吸引分娩による急速遂娩を行いました。しかし、吸引分娩によっても、分娩ができず、医師が吸引分娩を何度も試みたのちに、帝王切開に切り替えたものの、それまでの分娩過程におけるダメージが胎児にあったため、胎児は仮死状態になっており、出血性ショック等で出産後数日で亡くなってしまいました。出産時まで、おなかの中では胎児は元気に育っており、出産にリスクがあることは認識しつつも、相談者は、究明し、子供の命を無駄にしたくないとのご意思で、医療過誤訴訟の依頼をされました。

解決への流れ

担当弁護士が、相手方病院に対し、カルテやCTG(胎児心拍数モニタリング)の資料を請求し調査したところ、吸引分娩の方法が不適切であった可能性や早期に帝王切開に切り替えるべき必要性があったことが医療過誤に当たりうると判断し、訴訟提起に踏み切りました。吸引分娩は、ガイドラインによって回数や時間等が定められているのですが、現場ではおそらく緊急事態だったと予想され、医療過誤ではよくあることですが、カルテの記載も十分とは言えない状況でした。裁判は、約1年半かかりましたが、相手方医師が医療過誤を認める形で、3000万円を超える解決金を支払っていただくことで、和解により解決しました。

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川上 満里奈 弁護士からのコメント

産科の事故は、医療過誤事件の中で、協力医が見つかりにくく、弁護士としては困難な分野です。本件は、当事務所のネットワークで協力医が見つかり、協力医の意見を参考に、多数の医学文献をもとに立証を尽くしました。出産・分娩は、事故の可能性が付きまとう一方、胎児の調子も勘案しなければならないため、緊急性が付きまといます。そのため、CTG(胎児心拍数モニタリング)を読み解く能力や、医療に関する知識が不可欠です。本件も吸引分娩には、ガイドライン上で、吸引の回数、時間といった規定だけではなく、CPD(児頭骨盤不均衡)がないことなど、複数の要件が規定されています。医療過誤事件は、医師の具体的に行った医療行為を特定するためには、原則としてカルテやカルテに付随する資料しかなく、立証に困難をきたすことは多々あります。本件では、吸引の方法について、不適切だったことを主張するだけではなく、その他要件を満たしていたのかなどを詳細に主張立証したところ、裁判所から医療過誤があったことを前提の和解案が提示されました。協力医の意見だけではなく、医療文献(書籍・論文等)を交え、丁寧に主張・立証することにより、適切な解決が図られた医療過誤事件と考えています。