この事例の依頼主
女性
相談前の状況
職場でパワハラ・セクハラを受けるようになったと感じ、毎日日記のように手帳に手書きで被害状況を書き留めていた。ついに耐えかねて退職し、弁護士に相談。
解決への流れ
相談時に手帳を持参されており、その記述が具体的・詳細なものだったことから、弁護士として裁判での立証ができるかもしれないと判断し、またその内容が真実であれば違法なセクハラには該当しそうと判断したことから、その旨ご説明したところ、ご依頼いただきました。元同僚などに話を聴き、被害の内容が実際にあったと弁護士としては感じたものの、元同僚は裁判で証人となることを拒んだため、証拠としては必ずしも十分ではない状態で、まずは元使用者や加害者個人に損害賠償を請求する書面を送りました。しかし、何の返事もなかったため、やむを得ず訴訟を提起しました。訴訟を提起したところ、相手方には弁護士がつき、セクハラの事実はなかったと主張してきました。このまま行くとご依頼者様本人の尋問を行わなければ事実を証明できない(それでも証明できるとは限らない……)が、思い出すだけでも苦しいセクハラの事実を細かく証言しなければならないとなれば、さらに精神的苦痛が増してしまいます。結果的には、早期解決を望んだ相手方の提案により、請求額よりかなり低い金額を支払わせることで解決となりました。ただ、過去の裁判例からすると、判決まで行っても大差ない金額しか認められないと予想された事案であり、尋問を避けることができたことも考えると、客観的には穏当な解決ができたと考えています。
ハラスメント事案では、まずハラスメントの事実を立証できるかどうかが問題となります。現場をきれいに録画していることなどまずないでしょうから、せいぜい録音データや日記といった証拠を頼りに訴えざるを得ないことが多いと思います。(それでも、録音データや日記があるとないとでは大違いなので、被害者の方が少しでも訴訟を考えたなら、すぐにこういった証拠づくりを始めるべきです。)また、確かに裁判は損害賠償を請求する手続なのですが、被害者である当事者の立場からすれば、相手の非を公に認めさせて区切りをつけたい、自分なりに納得したいという気持ちを実現する手続でもあると思います。そのような手続の中で、尋問などでますます傷ついてしまうことは、できれば避けたいところです。早期解決のメリットも考えると、金額にこだわりすぎずに和解をすることも、裁判を選択した目的からすると合理的であることが多いのではないでしょうか。