この事例の依頼主
60代 男性
相談前の状況
高齢のお母様が亡くなる直前に書いた自筆証書遺言書。そこには、二男(依頼者)にほぼ全ての財産を相続させる旨の遺言が記載されていました。この遺言書に不満をもつ長男は、お母様本人が書いたかものか否かを問題とし、かつ作成当時、認知症などで意思能力を欠いていたのではないかということも問題としました。そこで長男は遺言書無効確認訴訟を提起し、「本人の筆跡でない」との筆跡鑑定書を証拠として提出して遺言書の無効を主張するとともに、かつ、そもそもその当時、本人に意思能力がなかったとの主張も合わせて主張しました。
解決への流れ
依頼者に、生前にお母様が書き残された自筆の書類をかき集めていただき、それら全てをつぶさに精査しました。そうしたところ、お母様の手帳のメモ欄に、たまたま書きとめた亡くなる直前期の読書感想メモが発見されました。これを証拠提出したところ、裁判所は、お母様は亡くなる直前まで十分な意思能力を保っていたものと認定しました。遺言書が本人の筆跡か否かについては、これを覆す決定的な証拠は見つかりませんでしたが、裁判所は筆跡鑑定を重視せず、お母様本人の筆跡であると認定しました。
筆跡鑑定の結果は絶対ではありません。裁判所は、筆跡鑑定結果をあくまで一資料として評価します。また、当事者が思い込みにより重要視していない何気ないものから重要な証拠が見つかることがあります。