この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
依頼者は、覚せい剤使用の罪で執行猶予中、再度覚せい剤を使用したことにより逮捕された。執行猶予中の再犯のため、起訴されれば執行猶予ではなく全部実刑が確実な状況であった。
解決への流れ
弁護人として、依頼者の覚せい剤依存など依頼者の今後の生活について、友人、ダルクなど周囲のサポートが受けられるよう粘り強く活動し、周囲の協力のもと、依頼者が再度覚せい剤を使用できないように環境を整えるとともに、依頼者本人も周囲のサポートに感謝するとともに自分の行動を十分に反省して、覚せい剤を使用しないと公判期日において誓いました。様々な要素が重なり判決は、全部実刑判決ではなく一部執行猶予判決となりました。
覚せい剤を使用した罪で執行猶予中、再度、覚せい剤を使用して逮捕起訴された場合、これまでは実刑になる確率が非常に高い状況でした。しかし、近年設けられた一部執行猶予制度により、実刑の一部の期間について刑の執行を猶予し、その刑の執行を猶予された期間、裁判所の外で覚せい剤依存に対する治療などを行うことができるようになりました。今回は、一部執行猶予ではなく全部実刑となる可能性が高い事案でした。しかし、弁護人として依頼者が再度覚せい剤を使用しないように環境を整えるとともに、依頼者本人が反省を深め再度覚せい剤を使用しないことを心から誓ったことなどから、一部執行猶予判決となったものと考えられます。一部執行猶予制度は始まったばかりであり、これから裁判例の積み重ねによる研究が必要ですが、弁護人としては、依頼者が再度覚せい剤を使用しないためにはどうするべきかという視点から、依頼者が再び覚せい剤を使用しない環境を整えて、覚せい剤依存の治療につなげる方法として一部執行猶予判決を求めることも一つの弁護方針といえるのではないかと考えさせられた事案でした。