この事例の依頼主
50代 男性
ご依頼者様は、死亡事故を起こしたとして逮捕されていました。接見に伺ったところ、自動車で人を轢いてしまったことにひどくショックを受けていました。事情を確認したところ、夜中の事故であり、ライトは当然つけていたものの、被害者は路上で寝ていて、轢いたこと自体にも全く気付かなかったものの、何かを轢きづっていることに気づいて、自動車の下を確認したところ、人を轢いてしまっていたという状況でした。飲酒していたわけではありませんでしたが、死亡事故であり、勾留もありうる非常に難しい状況でした。翌日が検察庁送致、とのことだったため、ご依頼を受けてすぐに勾留阻止のための意見書を作成することにしました。
家族の陳述書やご自身が会社員であるという状況、死亡事故は起こしてしまったが、自ら気づいて通報していることなどを踏まえて、勾留をすべきではないという意見書を作成し、検察官に送りました。その甲斐あって、ご依頼者様は勾留されずに翌日自宅に変えることができました。路上寝という事件だったためか、捜査も非常に難航している状況にあり、ご依頼者様も捜査に時間がかかっていることについて非常にご不安に思われていました。被害者にも代理人がついて、対応をしていましたが、謝罪は受け取らないという対応を取られてしまい、あとは示談関係については、保険会社を通じてという状況になりました。このように捜査段階でも難しい状況にありましたが、やはり、重要なのは本件においては、「過失」がそもそも認められるのか?という素朴な疑問でした。自ら深夜帯に現場に足を運び、別の弁護士に協力してもらって、実際に路上に寝てもらい、ギリギリまで車を動かしてどのような状態でカメラで映るのか、実際に運転席からはどのように見えるのかなどといったことを検証し、検察官に様々な意見書や写真を送り、ご依頼者様に過失がないのではないかとのことで、検察官とも何度か面談を行いました。結局検察官が処分の結論を出すのに1年ほどかかりましたが、最終的には、弁護人の意見や捜査した状況を踏まえて、過失の認定が難しいという理由により不起訴になりました。ご依頼者様は、実はこの後に警察から免許取消処分の行政処分を受けるということで意見聴取の機会を設けられることになりました。しかし、捜査機関の捜査により、過失の認定が困難だったはずであることから、死亡事故による点数の減点は不当であるということで、こちらもご依頼をいただきました。当該意見聴取の前に、保険会社とも協力して資料の提供を受けるなどして、意見書を作成して、意見聴取手続当日も意見を述べました。その結果、免許の取消は行わない、点数減点は行わないという結果となりました。
死亡事故という人がお亡くなりになってしまうような事故は加害者側であっても被害者側であっても非常に難しいと思います。特に本事案においては、深夜帯の事件であり、かつ路上で寝ていた人を轢いてしまったという事件であり、他の死亡事件と異なり、少し特殊な事件でした。交差点事故や追突事故とは事故態様も異なり、目撃者もいない事件でしたから、現場の検証が非常に重要になると考えました。そのため、自分も同じ時間帯、同じ場所で検証を行うなどしたことにより具体的に意見も述べることができたため、現場の重要性を感じた事件です。ご依頼者様は死亡事故を起こしたことに非常にショックを受けていましたが、不起訴という処分を聞いて非常にホッとしていました。被害者を死亡させてしまったとはいえ、自らが刑事責任を追及されてしまうには、あまりにも不遇な事件であったため、刑事責任を追及されることが無くなり、良かったと思っています。また、後に行政処分としても追及されることにはなりましたが、そちらも弁護士が適切な対応を行ったことにより、免許取消しの処分がなくなりました。ご依頼者様は、刑事処分にならなかったため、行政処分のおそれがあるとは露ほどにも思っていませんでしたが、行政処分も行われなかったため、非常にホッとしておりました。過失がシビアな事件であったからこそ、弁護人がどれだけ充実した弁護活動ができるかどうかといった重要性を感じた事件です。