犯罪・刑事事件の解決事例
#医療過誤

【医療事故・手術手技のミス・死亡・説明義務違反】

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髙橋 智 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人髙橋智法律事務所
所在地北海道 札幌市中央区

この事例の依頼主

40代 女性

相談前の状況

実家から離れて暮らす40才の主婦です。母親が心臓を患っていました。そのため、心臓の手術を受けたのですが、手術中に亡くなってしまいました。手術前に病院から説明を受けた父親によると「手術のリスク」は少ないということだったのですが、その後、病院側から死亡の原因についてのはっきりとした説明がなかったようです。医療事故があったと思うのですが、どうしたらよいのかわかりません。

解決への流れ

この相談でのポイントは、医療行為に過失が認められるかどうかです。例えば患者さんが医療行為に関連して亡くなったとしても、それだけで医療機関に責任を問うことはできません。実際に起こった事案ごとに、医療側にはどのような注意義務があるかどうかを検討していかなければなりません。この事例だとポイントとしては、①手術前の事前検査は適切だったか?例えば、手術を選択することが無理だったといえないか。②手術手技にミスは亡かったのか?③様態が悪化した後の救命措置が迅速・適切だったといえるのか?などがポイントになると思います。ただ、医療行為をどのようにすべきかは、法律で定められているわけではありません。そこが交通事故のようにきめ細かく法規が定められているような事故との大きな違いです。相談の例でも、死に至った経過を丹念に検証していく必要があります。そのための情報としては不足しています。お父さんから当時の状況をもう一度弁護士が聞き、必要なら医療機関からカルテなどの医療情報を入手し、その上で、医療機関側に責任が問えるかということを検討する必要があります。(検討に必要な資料)まず患者さんの病状に関するデータや医療行為(投薬や手術)の記録です。これらの情報は医療機関から手に入れる必要があります。複数の医療機関にかかっていた場合は、その全てです。いわゆるカルテなどの医療情報の開示は、多くの医療機関が応じてくれるようになっています。入手は可能だと思いますが、ただ、できれば、事前に弁護士に相談いただきたいと思います。例えば、病院側によってカルテが改ざんされる恐れがあるとか、カルテ保存期間の5年を過ぎようとしている場合等によっては、証拠保全という法的な手続きが必要となることがあるからです。証拠保全というのは、患者側が裁判所に対して、訴訟にする前に、カルテの検証を求めるという手続きです。

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髙橋 智 弁護士からのコメント

(通常事件との違い)通常の事件と異なって、証拠となるほとんどのものは医療機関側にありますので大変です。また、医療事故として責任を問えるかどうかに関しての判断には医療事故に患者側で取り組んでいる弁護士による調査・検討のほか、場合によっては協力してくれる医師による意見書などが必要になることもあります。そして、医療訴訟となると、さらに時間がかかりますね。訴訟に要する平均審理期間は約2年間で、通常事件の4倍です。したがって、医療事故に当たるかどうかの検討だけで、通常事件に比べてどうしても時間や費用もかかることになりますね。(調停による解決の重要性)訴訟になった場合には、費用は時間が嵩みそれなりの覚悟が必要となります。ですから、私の事務所では、訴訟に移行する前に、調停を申し立てて、円満解決を目指しています。調停委員には、医師の資格を持つ専門調停委員がおり、裁判官とともに、紛争解決の調停に乗り出してくれます。調停段階で、患者側、医療側が、互いの主張をぶつけ合い、専門調停委員の見解を参考にして考えれば、自ずと解決すべき道筋が見えてくるものです。(患者側で心がけるべきこと)医療側から受けた病状の説明や治療方針の説明の記録、手術の前に必ず行われる患者と親族への説明、特に手術によるリスクについての記録などを大切に保管され、自分でメモしておかれるとよろしいと思います。ただし、救命救急など処置が一刻を争う場合は除きます。そうですね。特にお年寄りや、お子さんなどの場合は、自分では記録できませんから、付き添って行かれる方がきちんと記録をとっておくことが必要です。