この事例の依頼主
50代 女性
相談者の父親は、借地上に自宅と賃借人が居住している賃貸アパートを所有しており、相談者と父親はその借地上の自宅に同居していました。ところが、その父親が亡くなり、相続が発生しました。相続人は、相談者を含めた父親の子ども5名で、関係が悪かったり、音信不通になっている相続人もあり、どうやって相続手続をすればよいのかと途方に暮れてらっしゃいました。父親の遺産は、借地権が中心で、あとは、若干の預金がある、という状況でした。
父親の預貯金は少なく遺産の中心は借地権という状況だったので、相続人5人で遺産分割を行うためには借地権を売却することが必要でした。そして、そのためには、相談者と父親が居住していた自宅だけでなく、賃貸をしていたアパートも手放さざるを得ないことになります。そこで、まず、借地についての評価の査定を不動産業者に依頼するとともに、地主さんに、借地の買取の意向があるかどうかをお伺いしました。すると、地主さんは、更地返還をしてくれれば買い取りたいとの意向だったので、依頼した査定結果をもとに買取代金の交渉を行い、一定の金額で合意することができました。このような作業を行いながら、他の相続人の住所を調べ、家庭裁判所に遺産分割調停の申立を行うとともに、それぞれの相続人の方達に手紙を書き、事情を説明して、相談者と関係が悪かった方や音信不通だった方にも家庭裁判所での遺産分割調停になんとか参加してもらいました。そして、遺産の内容を説明するとともに、地主さんとの交渉の内容等を説明し、了解を得るという作業を行いました。さらに、これらと並行して、賃貸アパートの賃借人の方達に退去していただく交渉を行いました。賃借人の方達の中には契約を更新して日も浅かった方もあったりで、難しい交渉もありましたが、事情をご説明し、立ち退きのための費用をお支払いして、全員の方達に退去していただくこととなりました。これらの目処がついた段階で、相続人の方達と地主さんとは、地主さんによる借地の買取のための売買契約を取り交わし、相談者さんが中心となって解体業者さんに借地上の建物の解体を依頼し、借地上の建物を解体して更地にしました。そして、更地化を完了し、無事に地主さんに代金を払ってもらって借地を買い取ってもらい、相談者を含めたら相続人の方達は、その売買代金を経費を控除して分配する形での遺産分割調停を家庭裁判所で成立させ、無事に遺産分割を完了したのでした。
この事案では、借地問題と借家問題とがあって、それらがさらに相続問題を機に、すべてを解決しなくてはならない状況になりました。それぞれの論点に問題がありましたので、一つ一つを丁寧に作業を行い、無事にまとめることができ、ご相談者にも安心していただくことができました。