この事例の依頼主
男性
相談者は、所有の土地上の建物の建替えを検討したところ、登記簿上の土地面積が実際に所有し占有している面積よりも狭いことが発覚しました。70平米ほども狭いのです。これは、実測した土地の面積が登記簿上に記載された面積よりも大きい、という、いわゆる“縄伸び”という現象なのですが、隣地との境界が明確になっていないという問題が絡んで、解決が難しい事案となっていました。登記簿上の面積が正されないと、実際の面積による建物も建てられませんし、売却もほぼ不可能に近いほど極めて困難となってしまう状況でした。そして、隣地との境界を明確にしないと、登記簿上の面積も正すことができないのです。
隣地所有者の方が意地を張らないで解決に応じてくれれば、解決は決して難しい事案ではないはずなのですが、本件では、そのようにはいきませんでした。元々、相談者の先祖と隣地所有者の先祖とが土地を分けた経緯があったのですが、隣地の方には、先祖から伝わる、土地面積に関しての不満があったようで、解決は容易ではありませんでした。隣地所有者は、相談者の所有面積は登記簿のとおりであり、その分以外に相談者が占有している70平米分は、本来自分達の所有地であり、相談者が不法占有しているのだ、などと主張する事態になりました。このため、調停での話し合いでは解決できず、訴訟(土地所有権確認と境界確認の訴訟)にならざるを得ませんでした。訴訟の当初、裁判官は、相手方である隣地所有者の主張にも引きずられていました。このため、こちらでは、過去に遡った資料や従前の経緯を可能な限り集め、それをわかりやすく整理して、裁判所に提出をしました。これにより、やっと、70平米は、相談者の所有地である、ということを裁判所にも認識して貰えたのでした。その上で、訴訟の長期化を避けるために、隣地所有者に若干の面積を譲渡する代わりに、隣地所有者の親族が所有する他の土地との境界も明確にする作業にも協力してもらう、という形をとることにしました。相談者にとっては、若干の面積を譲渡しても問題はなく、訴訟や別の土地との境界問題がさらに長期化することを避けたい、という意向がありました。このため、これらを一気に解決するために、隣地所有者の親族の方にも参加してもらい、測量を重ね、最終的に土地面積と境界とを確定する形の和解が成立しました。そして、無事に、登記簿上の面積も正すことができ、最終的に、その土地を売却することができたのでした。
境界紛争は、隣地との関係が難しいとともに、訴訟での解決方法にも難しいものがあります。実は、弁護士が提訴した後、その訴訟において、主張立証を正確に行っていないと、せっかく判決に至ってもその判決では登記ができず無効である、という残念な結果になってしまうケースもあるのです。間違ってもそのような事態にならないように、様々な資料を調査し確認の上、事前に法務局とも相談をして確認をした上で、和解案を練り上げることで、今回のような解決をできたと思います。