この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
相談者(不動産業者)が1室を購入したマンションの全体が、建築当時は容積率の規制を充たしてたが、その後、マンション1階部分が駐車場から店舗に用途変更された結果、購入時において、マンション全体が容積率違反の状態となっていた。相談者は、転売目的でマンションの1室を購入したが、その後、マンション全体が容積率違反であることが判明した結果、転売する際にエンドユーザーが住宅ローンを組むことができない物件となっていた。相談者が、転売価格が不当に廉価となったとして、売主の不動産業者に対して、説明義務違反を理由として損害賠償請求した事案である(小職が原告代理人である)。信義則上の説明義務違反の有無・内容が問題となる困難な事案であった。
解決への流れ
相談者は、原告として、500万円余りの損害賠償請求をしたが、第一審では、金融機関の融資の可否は、買主の与信に比重を置いた総合的な判断の結果であり、容積率違反が直ちに融資拒絶要因となるわけではないとして、重要事項説明の対象事項にはならないと判示し、請求棄却となった。しかしながら、容積率違反の有無は、法律上の制限であるから、売買契約書もしくは重要事項説明書に記載しなければならないにも拘わらず、それに違反して売買契約書もしくは重要事項説明書に記載せずに、住宅ローンを組めた事案があったとしても、そのことから、融資拒絶要因にならないとは言えない。小職は、控訴した上、そのことを証拠を挙げて丁寧に主張・立証した結果、控訴審では、裁判所の訴訟指揮もあり、相談者の損害賠償を一部認める内容の和解が成立した。
信義則上の説明義務違反に基づく損害賠償請求は、その請求原因が債務不履行か不法行為かについて争いがあり、法律構成が困難な事案でした。当初は、地裁に対し、債務不履行構成で訴訟提起したのですが、その後、控訴審(高裁)での訴訟指揮もあり、控訴審において、訴えを変更(交換的変更)しました。このように、不動産に関する訴訟は、事実認定の争いに加えて、複雑な法律構成の争いがあり、難しい事案が多いと思います。住宅ローンを組めないなどでお困りの場合には、是非、一度相談に来てみてください。