この事例の依頼主
男性
相談前の状況
依頼者は、大型店舗内で買い物に来ていた主婦に対し、スカートの中を盗撮したため、それに気がついた周囲の人が騒ぎ出し、その場で現行犯逮捕され、勾留されてしまったという事案です。
解決への流れ
私が依頼者の弁護人になったとき、相談者はすでに逮捕・勾留されていたため、私は、なんとか被害者の方と連絡をとって、被害弁償を行って示談をする必要がありました。このような場合は、担当検察官を通して、被害者の方の意向を確認してもらい、被害者の方が示談に応じてもよいということであれば、弁護士の連絡先を被害者の方に伝えてもらう、あるいは、被害者の方の了解を得られれば、弁護士限りで連絡先を教えてもらうという方法をとるのが通例です。この件においては、検察官から被害者に対して、当職の電話番号を伝えてもらいました。その後、被害者の方から連絡はいただけたものの、被害者の方は、慰謝料の支払いなどを望んでいないとのことで、示談まで至りませんでした。そのため、当職は、この間の示談に向けて努力した経過、依頼者の勤務態度や家庭の状況、さらに、家のパソコンに類似事案を思わせる写真などが一切なかったことなどを記載した報告書を作成し、本人の反省文とともに、検察官に提出しました。この件では、示談は成立しませんでしたが、依頼者に同一事犯を繰り返していた状況がなく、仕事や家庭生活も真面目に行っていたことに加えて、被害者の方も強く処罰を求めなかったものと思われ、不起訴処分で終了しました。
盗撮事案では、通常は初めての犯行ということはなく、家のパソコンの中に同種犯行の写真を取り込んでいる場合が多く、自宅の捜索によりパソコンを押収され、その事実が明るみに出る場合も多いです。しかし、この件ではそのような事実はありませんでした。また、私の経験では、痴漢の場合は身体的な接触があることから、被害者の方は慰謝料の請求をされる場合が多いのですが、盗撮についてはそのようなことがないためか、比較的慰謝料の請求がなされず、そのため逆に、示談を成立させることもできないということがあります。正直なところ弁護士の立場からみると、被害者の方には幾分なりとも慰謝料を請求していただき、示談を成立させた上で被害届を取り下げていただく方が、不起訴処分にしやすいのです。もっとも、盗撮の被害者の方は、非常に気持ちの悪い不愉快な思いをしており、金銭を要求することで犯人と関わりを持つことになるのは嫌だという、複雑な思いなのだろうとも思います。