この事例の依頼主
40代 男性
電車の中で、酔った勢いなどで女性の胸や陰部を触ってしまい、被害女性から騒がれ、駅員に引き渡され、さらに警察官に引き渡されたうえで、捜査は続くものの、家族が迎えに行き釈放された。その後、ご本人から相談を受けました。
1 弁護活動としてまず第一にやるべきことは、「被害弁償」です。しかし、当然のことながら、被害女性の氏名や住所はわかりません。そのため、本人から弁護人として選任していただき、「弁護人選任届」を警察(警察段階で身柄が釈放されている場合)や検察庁(送検段階)や裁判所(勾留段階)に提出し、弁護人となったうえで、警察官や検察官と連絡を取り、被害弁償の意向を示して、被害女性が被害弁償を受けるかどうか、その意向を聞いてもらうことになります。その際、必ず、被害女性の連絡先等は、被疑者には絶対知らせず、弁護士限りということで約束をします。被害女性は、被害弁償を受け入れる意向はあるものの、当然のことですが、自分の名前や住所が被疑者に知れるということは嫌がりますので、そのことを事前に警察官や検察官からも伝えて頂くことが必要です。2 被害女性や親権者の方(被害女性が未成年の場合)と連絡が取れた場合は、被害女性等の希望を前提として、電話だけでお話し合いを進めていくか、一度お会いしてお話しを進めるかなど選択し、被害弁償の額が決まれば、「示談書」を取り交わすことになります。3 示談金の相場は、私の経験では、30万円から50万円程度です。但し、被害女性が未成年者であり、父親などが交渉の窓口となる場合には、父親の怒りが激しく、本人の承諾のもと100万円を支払わざるを得なかったこともあります。4 被害弁償がなされれば、私の経験では、不起訴処分となる場合が多く、前科にはならない場合が多いです。但し、悪質な場合は、略式罰金(正式裁判を受けることなく、検察庁の主導による手続により罰金を支払って終了する。)ということもあります。
私が見る限り、痴漢や盗撮は依存症の方が多く、1回だけでは終わらず、再び事件を起こし、弁護人としての依頼がくることがあります。1回処罰を受けてもやめることができない場合は、本人も悪い事と十分わかっており、事実が公になれば、社会的地位や名誉を失うこともわかっていながら、どうしても衝動を抑えられなかったと告白される方もいます。このような場合、今後のことも考えると、薬物中毒と同じように、性的な依存症を治療しないかぎり、また同じ事を繰り返す可能性があるので、本人やご家族と相談の上、精神科の治療をお勧めしています。痴漢や盗撮などを繰り返していれば、最初は、示談が成立すれば釈放されたり、略式罰金で済みますが、それでも繰り返していれば、当然、正式な裁判となり、世間にも知れ渡り、社会的地位や名誉も台無しになることもあります。弁護人としては、もちろん処分が軽くなるための活動を全力で行いますが、同時に、二度と同種犯罪を起こさないように、家族も力を合わせ、専門医に治療を受けることを勧めています。