この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
内装工事業を営む個人事業主であるご依頼者は、相手方の自宅のリフォーム工事を請け負ったが、工事当日に相手方から突如使用する材料が異なる等のクレームをつけられ、双方合意の下でリフォーム工事請負契約を解除した。ところが、数か月後、相手方がご依頼者を被告として訴訟を提起し、ご依頼者がリフォーム工事請負契約上の債務を履行しなかったことやリフォーム工事請負契約の解除に伴う原状回復義務が履行されなかったことなどを主張し、相手方が他の業者に依頼して行ったリフォーム工事代金相当額を損害として請求した。第一審においては、相手方の主張が認められ、ご依頼者は敗訴した。ご依頼者は、第一審の判決内容に納得できず、控訴に際して、当職に依頼した。
ご依頼者としては、第一審がご依頼者の債務不履行を認定したことに関しては到底受け入れられない様子であった。債務不履行の有無に関しては、第一審がいわゆる本人訴訟であったこともあり、判決文上、裁判所が十分にご依頼者の主張を理解していない点が見受けられた。また、原状回復義務違反の有無に関しては、第一審の判決文を精査したところ、合意解除における原状回復義務に関する法令の解釈が誤っていることが判明した。そこで、控訴審においては、ご依頼者の主張を時系列に沿って整理した上で、ご依頼者が行った作業や用意した材料がいずれも当初合意したものであったことを改めて主張した。また、原状回復義務の有無に関しては、上記の法令の解釈の誤りを指摘するとともに、録音記録や本人質問調書等を精査し、相手方がご依頼者に対して原状回復義務を免除する旨の発言があったことを指摘して原状回復義務が生じる特段の事情が認められないことを主張した。上記の主張立証の結果、控訴審は第一審の判決を破棄し、相手方の請求をすべて棄却した。
ご依頼者は、日々研鑽を重ねて一つ一つの作業に当たっている方であった。控訴審において、ご依頼者には何らの債務不履行がなかったことが認定され、相手方の請求がすべて棄却されたことをお伝えした際には、ご依頼者はほっとするとともに、泣いておられた。仮に相手方と和解した場合には、ご依頼者が抱えていた問題は解決しなかったのではと思う。弁護士として、ご依頼者とともに、ご依頼者の抱える「問題」とその「解決」を模索することを大切にしていきたい。