犯罪・刑事事件の解決事例
#建物明け渡し・立ち退き

借りていた部屋を明け渡す場合において,賃借人の原状回復義務はどの程度か。

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宇藤 和彦 弁護士が解決
所属事務所なりた総合法律事務所
所在地千葉県 成田市

この事例の依頼主

60代 女性

相談前の状況

賃借人は,相談者の兄に当たる人でした。その人は,独身で,子もなく兄弟(姉妹)が相続人でした。賃借人が死亡したので,賃貸人は,その相続人に対して部屋を明け渡しを要求するとともに,部屋が通常以上に破損,汚損しているとして,300万円ほどの原状回復費用を要求してきた事案でした。被相続人(相談者の兄)は,その部屋に30年ほど住んでいたのでした。その間,賃貸人によってリフォーム等が行われた形跡はありませんでした。その賃貸住宅は,築30年ほどで,被相続人(相談者の兄)は,新築当時から住んでいたことになります。

解決への流れ

すでに,賃貸住宅そのものが耐用年数が過ぎていること,その部屋の中のユニットバス,湯沸かし器,キッチン等の備品設備も耐用年数が過ぎていました。また,部屋のフローリング,畳,壁紙も同様で,30年間にリフォームはされていませんでした。とすると,30年間,リフォームなし,設備の交換なしで,被相続人(相談者の兄)はその部屋に住んでいたのですから,部屋の内部の破損,損耗,汚辱は通常損耗として評価されるはずです。とすると,最大限見積もっても,原状回復義務として,50万円は超えないというのが私の判断でした。その後,賃貸人にも代理人がつき,交渉,調停,訴訟となりました。賃貸人は,かなり強硬で,今までも他の賃借人は原状回復費用として,100万円以上支払って退去したというのです。しかし,裁判上の和解で,依頼者が早期解決を望んだため,100万円で和解が成立しました。

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宇藤 和彦 弁護士からのコメント

賃借人が部屋を退去するときに,膨大な原状回復費用を請求される同様な事案は,よく聞きます。引っ越しは急がなくてはならないから早く解決したい,かといってどう見ても不当な請求と思われる事案です。賃借人が原状回復費用を負担するのは,故意に部屋を傷つけた,壊したような場合です。通常は,敷金の範囲内で原状回復費用は収まるはずです。それを超えて,請求される場合は,弁護士に相談するのが一番です。もう一つ,注意点は,部屋を退去するときは,必ず部屋の中の写真を撮っておくことです。どのような状態で明け渡したか,裁判等で争いになる場合が多いです。退去後は,賃借人はその部屋に立ち入れません。裁判で争いになると,賃貸人は特に汚れている,壊れている部分の写真だけを提出してきて,証拠写真がない賃借人は不利になります。