犯罪・刑事事件の解決事例
#任意売却

80年以上放置された仮差押登記の抹消登記手続きを行いました

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杉浦 大樹 弁護士が解決
所属事務所杉浦法律事務所
所在地愛知県 豊橋市

この事例の依頼主

男性

相談前の状況

依頼者様が不動産を相続され、売却しようとしたところ、仮差押登記が設定されており、買い手が見つからない状況でした。ところが、仮差押登記自体が80年以上前のもので、かつ、その債権者は依頼者様やその親族も全く知らない人物でした。どのように仮差押登記を抹消したら良いのかわからないということでご依頼いただきました。

解決への流れ

【調査段階】仮差押の根拠のとなっている債務の有無、仮差押債権者の特定について、調査を行いました。債務の有無については、親族等に当時の状況を知っている方がいませんでしたので、不明という結論に至りました。消滅時効が完成しているのではないかと思われる方もいらっしゃいますが、仮差押がされていることは時効の完成猶予事由(現行民法149条参照)ですので、債務が残っている可能性があるという前提で手続きを進めることになりました。もっとも、80年以上前(戦前当時)の債務ですので、額面としては非常に少額で、債務が残っていたとしても容易に支払える金額でした。仮差押債権者の特定については、登記名義から戸籍・除籍謄本や住民票の取付を行いましたが、該当ありませんでした。また、登記名義の住所地を訪問することも検討しましたが、現在では存在しない住所表示でした。役所に問い合わせてみましたが、現在の住所表示による住所地を特定することもできませんでした。80年以上前でしたのでおそらく仮差押債権者は亡くなっていると思われましたが、死亡の事実を公的書類で確認することはできず、ギリギリでご存命の可能性もありましたので、生死不明という前提で手続きを進めることになりました。【手続段階】80年以上前の仮差押でしたので、旧民事訴訟法が適用される手続きでした。当然ですが、最近の六法全書には記載がありませんので、どのような内容の法律であったか調査したところ、現在の民事保全法とほぼ同様の内容でした。仮差押登記を抹消する方法としては、以下の3つの方法があります。①仮差押債権者の取り下げてもらう。②裁判所に起訴命令を出してもらい、一定期間内に訴訟提起がなければ、裁判所に仮差押を取り消してもらう。③事情変更による仮差押の取消を裁判所に認めてもらう。債権者が生死不明でしたので、①の方法は選択できません。②については、申立を2回行う必要がありました。③は1回の申立で済み、80年以上経過していることから事情変更が認められる見込みが大きかったため、今回は③の方法を選択しました。裁判所に申し立てを行ってから、取消が認められるまで、現行の民事保全法であれば、書類のやり取りだけで済むのですが、旧民事訴訟法では、口頭弁論を経なければならず、管轄裁判所まで出向いて期日に出頭する必要がありました。最終的には、取消が認められ、依頼者様は不動産を売却することができました。

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杉浦 大樹 弁護士からのコメント

裁判所に対する手続き自体は非常にシンプルですが、申立に至るまでの調査に時間を要しました。古い仮差押等は、適用法も現在と異なる可能性があるため、弁護士による確認が必要です。