この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
小規模のクリニックを退職した元従業員が、タイムカードの提出と未払賃金の支払いを求めてきました。相手方はもともと問題社員であり、他の従業員を辞めさせるような言動を繰り返しており、依頼者は頭を抱えていましたが、退職した後も再び現れたため、弁護士に対応を依頼されました。
解決への流れ
クリニックは変形労働時間制を設けていましたが、労働基準法上必要な手続が行われていませんでした。その隙をつかれた形であり、訴訟となれば請求を斥けることが困難と見込まれました。そこで、穏便に進めるため協議を繰り返し、最終的には一定の減額を行い、口外禁止条項を設けたうえで和解することができました。
従業員との紛争において、経営者が最も注意を払わなければならないのは、他の従業員への飛び火です。特に、未払賃金請求のような類型は、他の従業員もただ乗りが容易ですから、一人との紛争が複数人の紛争に拡大してしまうと、手痛い損失を被ることになりかねません。また、労使間の対立が先鋭化すると、企業風土の悪化につながります。そのため、できるだけ穏便に協議し、口外禁止条項を設けることが、重要となります。本件は、仮に訴訟に持ち込み争っても無傷で済むわけではありませんので、双方が一定の譲歩をすることで、穏便に解決したことは適切であったといえます。紛争が拡大する前に、早期の段階で弁護士にご相談いただくことが有益と言えます。