この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
殺人未遂事件の被害者の女性の依頼を受け、裁判員裁判に参加しました。犯人は捜査段階から殺意を否認しており、傷害事件にとどまると主張していました。そのため、彼女は、犯人が比較的早期に刑務所から出てくるのではないかと怯えておられました。また、外国人でもあったため、裁判員が真に自分に共感してくれないのではないかという不安もお持ちでした。
解決への流れ
裁判所と法テラスに手続をとり、国選の被害者参加事件としてもらい、被害者が費用を負担せずに済むようにしました。検察官と適宜打ち合わせをしながら情報を共有し、裁判の準備を進めました。具体的には、犯人への尋問事項を検討するとともに(実際の尋問はすべて検察官にやっていただきました)、裁判内で行われる、被害者の意見陳述と、被害者の求刑意見の準備を行いました。そこでは、検察官が時間の制約上、立証に時間を割けないと思われる箇所(被害者が日本に来た経緯や、日本に来てからの苦労、被害後の見えない苦しみなど、裁判員の共感を得るべき箇所)につき、重点的にフォローしました。裁判所には、スペースの確保と、犯人から姿が見えないように遮蔽する措置をとってもらい、裁判傍聴にはすべて付き添いました。結果的に、検察官も直前で求刑を増やすほどに裁判員の共感を得られた感触があり、判決も、同種事案の中でもかなり重いものとなりました。
まさに「一命をとりとめた」と評価できる、重い事件でした。それだけに検察官もかなり注力していた事件であり、最初は、被害者参加するまでもなく結果が期待できる事件だと思っていました。ところが、いざ検察官から詳しく事件の経緯を聞くと、検察官としても少し弱気になるような部分があったようでした。もっとも、そこは、実際に犯行現場に行って被害者から話を聞く中で、丁寧に説明すれば必ず裁判員にも共感してもらえるところだと感じられました。そこで、私はそこをケアすることに集中し、結果的に、検察官との役割分担がとてもうまくいき、成果につながりました。被害者様とは、今でも時折、日常の相談事をいただいており、私にとっても思い入れのある事件となりました。