この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
御依頼者様のお仕事は、職務の性質上、残業が発生しやすいお仕事ではあったものの、そうして日々発生する残業について法定の残業代請求が払われないどころか、その請求をすること自体が悪であるかのような空気が支配する職場で、御依頼者様は働かれていました。さらには、御依頼者様の仕事ぶりに対して適切な指導をすることなく、その仕事ぶりについて人格攻撃をするようなパワハラをする上司がいたこともあり、御依頼者様は精神的に疲弊し、精神疾患を患うまでになってしまっていました。そのような苦しい状況の中で、御相談にいらっしゃいました。
労働審判提起前は、相手方企業の対応は不明ではあったものの、通常の民事訴訟に比べてかなりスピーディに事件が解決に至る労働審判を提起することをお勧めして、御了解を得ました。今回の御依頼者様の労働審判における請求は、まず未払の残業代の請求そして上司のパワハラに対する慰謝料請求の2つでした。労働審判手続においては労働関係に関連する不法行為責任に基づく損害賠償の請求も可能です。結果としては御依頼者様が立てた請求のうちパワハラについては相手方企業が頑強にそれを否認したことにより、証拠不十分で認定されるには至りませんでした。不法行為責任認容のハードルは正直高いです。ただ結論としては、和解で審判が終結しました。その内容ですが、御依頼者様に対する未払残業代相当を、御依頼者様が使用者企業から貸与を受けていた奨学金の残額と相殺する形とし、お互いに支払う債務はほぼない状態での解決となりました。内容的に見ると、こちらの請求額があまり認められなかった点では確かに不満が残りましたが、相手方企業に対する奨学金の負債がなくなったことで、御依頼者様が、残業代を認めなかったり、パワハラをする上司がいる問題ある企業と今後完全に縁を切って、新しい職場での仕事をするきっかけになった点では、御依頼者様は満足されたようでした。
労働審判は、月に1度のペースで期日を開く民事訴訟とは異なり、比較的短期間(2〜3か月間)の間に最高3度の期日を開く中で、書面の審理中心ではなく、主に口頭での審理を中心として、裁判官、使用者側代表、労働者側代表の3人の審判官による判断を仰ぐ制度です。この事例でも2回目の期日で和解が成立したことで相談からおよそ3か月もしないで事件が解決しています。審判を起こされた企業としてはそのプライドもあり、また企業存続のためにも負けられないと必死に抵抗するという印象があり、企業を相手として労働審判を戦うことはなかなかタフな戦いだと認識せざるを得ないところです。ただ、労働審判で話を続ける中で、和解の機運が生まれることもあり、何よりスピーディな解決が期待できる点では、弱い立場に置かれている労働者の方にとっては、やはり魅力的な紛争解決手段ではないかと思います。どのような解決策がより適切であるかは、是非御相談いただいて、御提供いただく職場についての詳細な情報を元に一緒に話し合って決められたらと思いますので、迷っていらっしゃるようであれば、まずは御相談いただければと思います。初回相談60分までは無料で相談対応をしていますので、その点では御安心して御相談にいらしていただけるのではないかと思っています。