この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
とある医療法人の開設者の配偶者の方からの相談で、自筆の遺言書があり、その内容では遺産総額の90%以上が医療法人に寄付されることになっている、とのことでした。
解決への流れ
本件は、自筆遺言の効力の問題、遺産には法人の株式(複数種類)や書画骨董品があったためその評価の問題、法人への遺贈ということで生じるみなし譲渡所得課税の問題など様々な問題がありました。それら問題点を一つずつ詰めていき、受遺者である法人に対し遺留分減殺請求を行ったのですが、著しく低い金額の支払い提示しかなかったため調停へといたりましたが、ここでも相手方の対応はほぼ変わりませんでした。そのため訴訟となり、第一審ではこちらの請求のほぼ全額が認容される判決が出され、相手方が控訴しましたが、控訴審で和解となりました。和解金額は、相手方提示の額の15倍となり、完全勝訴的和解でした。本件は、2019年7月の遺留分制度に関する法改正前に相続が発生した事案ですので、価格弁償が原則ではなかったのですが、依頼者様は株式等の取得による法人の経営に参画することを望まれなかったため、株式等の現物支給による和解ではなく、価格弁償による和解を目指しておりましたが、無事依頼者様もご納得の内容で解決することができました。
遺留分制度は、2019年7月の法改正により大きく変わりました。本件は改正前の法律が適応される事案でしたので、単純に遺留分を認める判決のみもらったのでは、取得した株式をどうするか、という問題が後をついて回ることになります。取得した株式について、買い手を探す、あるいは法人に買い取り請求を行っていくといった方法も考えられますが、非公開株式の場合買い手を探すのも手間がかかりますし、買い取り請求となったとしてもすんなり話し合いで解決するかどうかわかりません。また、税金の問題も別途生じる可能性があります。本件は、和解で価格弁償での解決に至ることができましたので、依頼者様のご要望に沿いつつ、早期かつ一回的解決ができたものといえ、ご満足をいただくことができました。