この事例の依頼主
20代 男性
相談前の状況
複数の傷害事件,暴行事件で逮捕勾留されている方の刑事事件を被疑者段階から受任しました。初めてお会いした際には,1件の暴行事件については,自分は一切やっていない,被害者が適当なことを言っているとのことでした。その他の件に関しては,暴力を振るったことは事実であるとのことでした。接見を重ねて,全ての事案について,詳細に事情を聴取し,裁判に備えることになりました。
解決への流れ
接見において,詳細な事情聴取をする中で,自称被害者の言っている内容がどうもおかしいと思うようになりました。犯行は,朝の通勤時間の電車内でのこととされていましたので,実際に同じ曜日の同じ時間の電車に乗ってみるなどとして,現場確認も十分に行いました。起訴後には,検察官から徹底的な証拠開示を求め,依頼者とも綿密に協議をして,やはり依頼者が殴ったという供述はおかしい,殴っているはずがないということを確信しました。弁護人としては,全面的に争うという前提のもと,必要な準備をしました。具体的には,自称被害者の証人尋問の準備です。この場合,検察官は,被害者の話を事前に聞いていますし,あらかじめ尋問の準備をできるのですが,反対当事者の行う反対尋問は,準備に工夫が必要です。また,被告人質問では,今度はこちらが十分に打ち合わせをして当日の尋問をすることになります。本件では,これらの準備や取り組みが功を奏し,判決において,裁判所は,弁護人の主張を全面的に採用し,自称被害者の証言は信用できないと判断しました。
無罪を争う事案では,検察官からの十分な証拠開示を受け,その証拠を徹底的に検討することが必要です。証拠を吟味した上で,被害者に対する尋問に臨めば,被害者の証言の不自然な点を裁判所に理解してもらいやすくなります。この事件では,その他の事実関係については認めているため,示談交渉などの情状弁護もしています。結果的に一部無罪判決で,執行猶予付き判決となったため,判決日に依頼者は釈放されました。1つの事件で,情状弁護から無罪を争う活動まであらゆる活動をすることになったため,私としても思い入れのある事件となりました。