この事例の依頼主
男性
当番弁護で警察署に接見に赴きました。事案としては,夫の妻に対する家庭内暴力事案で,逮捕されたばかりの時点でした。事情を聴取する中で,自宅において,相談者が妻に暴力を振るったことは間違いがないとのことで,事実関係に争いがない事案でした。自営業のため,身体拘束が長期化した場合には,仕事が立ちゆかなくなり,被害者である妻も含めた家族全員の不利益になることが明らかな状況でした。
初回接見を受けて,私選弁護人として直ちに受任しました。依頼者は,逮捕段階であり,翌日には検察庁に送致され,勾留請求がされるという状況でした。勾留請求がなされてしまうと,裁判官による勾留質問を経て,勾留されるかどうかが判断されます,そして,勾留されると,10日間は身体拘束が継続します。さらに,10日間勾留期間の延長がなされることも多く,捜査段階で最大23日間の身体拘束がなされてしまいます。そこで,私は,勾留回避に向けた弁護活動に注力することとし,受任当日のうちに,依頼者の実家家族と接触を図り,身元引受書などの作成にかかりました。同時に,依頼者が釈放された場合には,依頼者を実家で預かってもらえるように依頼し,了承を得ました。その後,検察官宛の勾留請求をしないように求める意見書や裁判官宛の勾留請求却下を求める意見書を作成しました。結局,検察官には勾留請求をされてしまいましたが,私は裁判官に面会を求めて,勾留請求を却下するように要請しました。裁判官は,捜査が終了するまで,依頼者が被害者である妻に何らかの接触をしないか心配していました(罪証隠滅のおそれ)。しかし,私の方で,依頼者の実家の身元引受書を用意し,依頼者が釈放された場合には,当面,実家で生活することなどを準備していたため,勾留請求却下を獲得することができました。釈放後,依頼者の実家家族とともに,依頼者を迎えに行き,捜査が終了するまで遵守すべき事項を伝えました。釈放は,処分保留として,追って検察庁から処分が決められるということになりましたので,最終的に不起訴処分となるように準備しました。被害者との交渉を経て,被害者からは許してもらうことができ,示談が成立しました。その結果を検察官に提出し,不起訴処分を獲得することができました。
弁護士が介入しなければ,早期の釈放は考えられない事案でした。私選弁護人を依頼するメリットは,逮捕直後からも選任できるということです。国選弁護人は,勾留が要件ですので,勾留されてから選任されます。この間の数日間は弁護人が付いていない状態となります。勾留が決まってしまうと,10日間は身体拘束が続く上,さらに10日間の勾留期間の延長も多くの場合ではなされてしまいます。