この事例の依頼主
40代
相談前の状況
日本がハーグ条約(子の奪取に関する国際条約)に加盟する前の事件ですが,国際結婚をした日本人の妻とイギリス人の夫の離婚について,夫から依頼を受けました。妻は仕事中心の生活をし,当時5歳となる長男は夫が育てていました。夫は,長男について,親権は妻に譲っても,1年に1度程度の割合で,母国であるイギリスに連れていく権利の確保を望んでいました。
解決への流れ
その後,離婚調停が始まりましたが,その最中,妻が長男を連れて家を出てしまい,居所が分からなくなりました。夫は探偵にも依頼し,長男を探しました。10日ほど経った頃,妻が実家(倉敷市所在)で子を匿っていることを知った夫は,妻の実家の窓から侵入し,長男を確保しました。しかし,妻の父母が,子が誘拐されたとして警察に110番したため,父と子は,3台のパトカーに囲まれ,警察に連行されました。弊職は,連絡を受け,警察と電話で交渉しながら,現地に向かいました。弊職の交渉の結果,警察は父子を解放しました。長男は,父との再会を大変喜んでいました。夫は,翌日,私の反対を押して,長男を連れてイギリスに戻りました。しかし,妻も,イギリスに赴いて長男を捜し,イギリスで裁判に基づき,かつ,警察の介入の下,子の身柄を確保しました。その後,日本において,離婚,面会交渉の裁判をしましたが,夫は,当初の希望であった1年に1度程度の割合で子をイギリスに連れていく権利を確保することができました。
本事案でもそうですが,欧米では,日本と違い,子の奪取・養育費の支払いについて,警察が介入することがあります。外国と日本では,婚姻や家族に対する価値観が異なることも多く,離婚事件の対処においては,困難を極めることがありますが,父と子が倉敷市で警察に連行された際も,現地に赴く等,適切かつ丁寧に対応をさせて頂いたことが事案の解決に繋がったと考えております。