この事例の依頼主
70代 女性
相談前の状況
この事案は、79歳の方の検査入院において、バリウムを大腸に注入するレントゲン検査(注腸検査)に際し、穿孔が生じ(腸壁に孔があくこと)、バリウムが腸から漏れたことによって死亡した事案でした。遺族が医療行為に対し不満を抱き、A病院に掛け合いましたが、病院側は誠実な対応をしませんでした。そこで、受任しました。
解決への流れ
証拠保全の申立てをし、カルテ等を入手して、協力医と相談の上で提訴しました。裁判では、他の疾患またはその依頼主の体質による穿孔か、それとも、医師の過失による穿孔であるのかが争われました。判決は、医師の過失行為、過失行為と依頼主の死亡との間の相当因果関係を認めました。この判決は朝日新聞や報道番組等の複数の著名なマスメディアに取り上げられました。
この事案は、誰が見ても医療過誤だとするものではなく、正当な医療行為と過誤との境界線にあり、困難な事案でした。判決後、マスメディアをご覧になった方が、同様の相談に来られました(解決事例②)。証拠保全をあらかじめしておくと、訴訟提起後に相手方がカルテ等を偽造できなくなるため、医療訴訟に非常に重要な手続といえます。また、医療過誤事件においては、協力医の存在が不可欠で、本事案でも苦心して協力医を探しました。