この事例の依頼主
20代 男性
片側2車線の道路を自動二輪車にて走行していた20歳前半の男性が、信号のある交差点を直進しようとしていたところ、反対車線を走行中の自動車が、この交差点で転回しようとし、衝突した事案です。男性は、衝突の衝撃で自動二輪車から投げ出され、道路に打ち付けられました。すぐに病院に救急搬送され、事故直後の入院と1年あまりの通院を余儀なくされました。男性は、事故の衝撃からか、事故の記憶を無くしており、家族の印象では、事故前と比べて「怒りっぽい、飽きっぽい、落ち着かない」等の様々な変化があると感じていました。1年あまりの通院後、整形外科にて症状固定と判断されたため、保険会社に手続きを任せる方式のいわゆる「事前認定」にて「後遺障害等級認定」を申請したところ「神経症状(いわゆるむち打ち)で、14級」という認定結果でした。家族は、男性の性格の変化が後遺症として反映されていないのではないかと疑問をもち、ある弁護士に相談することとしました。男性や家族との面談の結果、その弁護士は「高次脳機能障害」ではないかとの疑いを抱いたにも関わらず、その認定検査が一切行われていませんでした。そのことを家族にお伺いすると、高次脳機能障害に関する知識がないため、病院や保険会社にいわれるがまま手続きを行っていた、という家族の回答でした。
高次脳機能障害の疑いを持ったものの、その認定に必要な資料等が全くなかったことから、その収集・検討から始めることとしました。高次脳機能障害の認定のためには、「事故直後の意識障害等」が必要になるが、男性に記憶がありませんでした。そのため、救急搬送された病院のカルテを検討したところ、初診時に意識障害はなかったものの、救急車の中で失っていた意識が戻った旨の記載を発見しました。そこで、消防署に照会したところ、救急活動記録票に、「意識を失い、その後病院到着前に意識を回復した」旨の記載がありました。初診時には意識を回復していたことから認定が難しかったが、結果として、この救急活動記録票が決定的に重要な証拠となりました。その後、高次脳機能障害の認定に必要な検査を受け、資料を収集し、自賠責に被害者請求にて後遺障害等級認定を申請したところ、「高次脳機能障害」が認定され、等級は「7級」と判断されました。
・事前認定時には行っていなかった意識障害の検査を行わせた。・多くの同種事案を担当してきた知識が豊富な弁護士だから、高次脳機能障害認定が可能になった。・高次脳機能障害の認定に必要な消防署の保管する「救急活動記録票」が決め手となった 。