この事例の依頼主
50代 女性
相談前の状況
相談者は、専業主婦であるところ、夫と共に持ち家に住み、預貯金も十分有り、金銭的に不自由することはありませんでした。にもかかわらず、最近、万引きを繰り返すようになり、とうとう、刑事事件として一度執行猶予付きの判決を受けました。ところがそれでも万引きが止められず、執行猶予の期間中に再び万引きをし、逮捕されました。
解決への流れ
夫を含む家族が相談者のことを非常に心配しており、かつ、生活ぶりを聞く限り、お金に困って事件を起こしているわけではなく、かといってイタズラで万引きをしているわけでもないことが推察されました。いわゆる窃盗症のような精神的な問題が根底にあるのだと見定め、捜査終了後、起訴されて裁判所の事件となってから、直ちに保釈をし、ご夫婦で何度も来所いただいてお話をしました。その中で、相談者が夫に対して畏怖感をもっているらしきこと、夫が妻との時間よりも友人と遊びにいったりする時間を大事にしていたこと(もちろんいわゆるDVやモラハラ案件のような話ではなく、夫が相談者のことをいつも心配していることはよく分かる事例でした)などから、相談者が精神的に満たされない思いを募らせた結果、事件にいたったのではないかと思われました。そこからは、カウンセリングや夫婦関係の見直しなどに取り組んでいただき、裁判では執行猶予中の案件ではあるが、再度執行猶予として、刑務所に行くのではなくて家族に見守ってもらいつつ心のケアを進めることこそが重要だと訴えました。幸い、再度の執行猶予となりました。
単純に、「万引きを繰り返しているから窃盗症だ」などと裁判所で主張しても裁判官は事情を汲んではくれません。本件では、相談者やご家族ととどうしたら防げるのか、何が原因だと思うかを一緒になって悩み抜くなかで、夫婦関係の改善が実は解決の糸口だと導くことができ、裁判官に対しても説得的に説明ができたと思います。刑事事件は、いやがおうにも判決で結論が出て、そこで終わりになりますが、事件の当事者の人生はそこで終わりではありません。本件では、相談者の夫との関係を含む、その後の人生も見据えた解決ができた案件だったと思います。