この事例の依頼主
60代 男性
相談前の状況
ある会社を経営する社長には妻、子供がなく、推定相続人は妹1人だけです。その社長はオーナーで、自分が創業した会社の株式の全部を所有しています。社長の妹の周りにいる人物は、社長の妹の立場を利用し、それまでその会社から不正な利益供与を受けてきました。その社長が亡くなれば、法定相続により株式の全部を妹が相続することになり、その妹の周りの会社に全く無関係の人物が妹を利用して実質的に会社の経営の実権を握ることになり、そうなれば会社経営が破綻することは目に見えています。他の役員や従業員はそれを心配し、社長に遺言をしてほしいと頼んでいましたが、社長はなかなか遺言してくれませんでした。
解決への流れ
他の取締約や従業員から相談を受け、社長に長年経営を一緒にやってきた他の役員に会社の株式を遺贈するなどの内容の遺言をすることを粘り強く勧めました。結局会社の行く末を心配した社長は会社を守ることを優先した公正証書遺言を作成しました。そして、遺言執行者には弁護士を指定しました。社長が遺言して2年後、社長は急死しました。遺言執行者に就任した弁護士は、遺言のとおり社長名義の不動産は妹さんに、会社の株式はほかの数名の取締役がそれぞれ取得することになり、会社の経営権を守ることができました。
社長のあの遺言がなかったら会社は今頃どうなっていたかと思うと、今さらながら遺言というものの強い力を改めて感じます。世の中には、遺言があってもそれを無視して全相続人の同意のもとで遺産分割するケースもあります。しかし、遺言があれば法定相続に優先できますので、このようなケースでは遺言することで会社を守れるのだということをはっきりと教えてくれます。