犯罪・刑事事件の解決事例
#交通犯罪 . #加害者

救護義務違反(ひき逃げ)ということで突然逮捕されてしまった事案

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射場 智也 弁護士が解決
所属事務所射場法律事務所
所在地大阪府 大阪市中央区

この事例の依頼主

年齢・性別 非公開

相談前の状況

突然警察が自宅にやってきて、「救護義務違反(ひき逃げ)で逮捕する」と家族を連れて行ってしまった。警察は、家族にも詳しい話はしてくれず、家族としても何が何だか全く分からないという状況で相談に来られました。

解決への流れ

「どうやらひき逃げで逮捕されたらしい」ということくらいしかわからない状態でしたので、まずは本人の拘束されている警察に赴き、詳しく話を聞くことにしました。逮捕直後は基本的に弁護士以外は本人と面会ができません。通常、突然逮捕されてしまった場合、本人としても突然の逮捕に驚きつつ、冷静さを保てないまま、それでも取調べはどんどん進みます。今どういう手続き中なのか、サインを求められている書面は何の書面なのか、そういうことを理解できている場合は少ないのが現状です。その中で、何かよくわからないうちに、警察から色々と言われ、流されるままに、書面にサインなどしてしまう場合も多く、初めの段階でサインしてしまった書面が、後に決定的な証拠とされてしまうこともよくあります。そういう事情もあり、逮捕直後はとにかくまず本人と弁護士が話をすることがとても重要です。今回も、できるだけ早く警察署に向かい、本人と話をしました。詳しく話を聞いたところ、本人は、「ひき逃げなんてとんでもない」「人をはねたことなど全くしらない」「なぜこんなことになっているか分からない」ということでした。後から判明するのですが、このケースでは、事故自体は発生していました。ただ、この事故は、自転車が横から車の左後方部分に突っ込んできていただけであって、運転手の視界から完全に外れた部分で発生した事故であったので、本人は「何か音がしたな」くらいの認識しかなかったのです。人がケガをしたことを認識しつつ、救急車を呼ぶなどしなければ、それは「救護義務違反(ひき逃げ)」になってしまいます。しかし、人がケガをしたことなど全く気付かず、そのままその場を離れただけでは「救護義務違反(ひき逃げ)」にはなりません。しかし、このような状況の場合でも、警察はこちらの言い分に聞く耳を持ってくれることは少ないといえます。警察は、「とにかく自白をさせる」ということを重視します。「人をはねたことなどない」、「知らない」といくら説明しても、「嘘を言うな」、「正直に言え」、「気付いていないはずは無い」というようなかたちで、こちらの話を聞かないというケースがよく見られます。実際、人をひいてしまったことが分かっているのに、しらばっくれるケースもあって、警察としてはそういう嘘つきを絶対に逃がさないという思いもあるのかと思います。ただ、それはまた別の話であって、本当に知らない・本当にやっていない人にとっては、本当のことを話しているのに嘘つき呼ばわりされてしまうことになり、いい迷惑です。そういう事情もあり、「やっていない」ことを「やっていない」、「知らなかった」ことを「知らなかった」と分かってもらうのは意外と困難です。警察沙汰などと無縁の生活をされている場合には想像しにくいかもしれませんが、令和の時代でも、依然としてこういう状況が頻発しているのが実情です。この方は、幸いにも、「知らないものは知らない」と根気強く言い続けることができていました。私からも、「気付いていたかもしれない」というような調書に署名押印してしまうと、人にケガをさせたことに気付いていながら逃亡(=ひき逃げ)したことになってしまう、一度そういう調書に署名押印すると、今後その内容を覆すのは非常に困難なことなどを説明し、自分の考えや記憶と異なる調書への署名押印は絶対にしないように、更なる念押しをしました。

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射場 智也 弁護士からのコメント

この事案では、ひき逃げで逮捕されてしまった場合の「刑事事件としての対応」を紹介しました。同時並行して進めなくてはならないのは、早期釈放への対応です。裁判官は、対象者が逃げないか、証拠隠滅をしないかということを大きな要素として、身柄拘束の必要性を検討します。そこで、家族の方に身元引受人になってもらい、裁判官に書面を提出しつつ、「本人は逃げたりしない」し、「証拠の隠滅などやりようがない」ことなどを説明し、釈放しても大丈夫ということを理解してもらう必要があります。今回のケースでは、そういう対応も功を奏して、10日間の身柄拘束(勾留)という事態を避けることができ、一泊二日ほどでの釈放になりました。釈放になった後も、今度は警察署に通う形で取調べは続きましたが、ご本人の頑張りで、最後まで、「知らないものは知らない」という話を貫き通すことができ、最終的には、嫌疑不十分という形で不起訴処分を勝ち取ることとなりました。交通事故の加害者を疑われたり、実際に加害者となってしまった時は、主に3つの問題を考える必要があります。それは「刑事事件」「運転免許証」「民事事件」の各問題です。「刑事事件」としての問題は、罰金刑や懲役刑になるかどうかというもので、今回紹介したような内容です。「運転免許証」の問題は、免許取消し・免許停止などの処分がどうなるかというものです。「民事事件」としての問題は、被害者への賠償をどうするかというものです。これらは複雑な問題が多々あります。今回のように、「刑事事件」としては嫌疑不十分となって疑いが晴れたのに、「運転免許証」に関しては免許取消し処分のままであり、いくら刑事事件として嫌疑不十分になったと説明しても、免許証が戻ってこないなどということはよくあります。いずれにしても,まずは相談をすることで,自分の置かれている状況を理解し,適切な対処をする,そういうことで結果が変わってくる場合はかなり多いといえます。