この事例の依頼主
70代 男性
相談前の状況
土地を先代から貸している。借地権者も先代からである。建物は二つで、一つは住居、一つは作業所である。借地権者が地代を払っていない時期が1年間ほどあり、その後は毎月地代を支払っているものの、その約1年間の滞納は解消されていない。作業所としての建物は、ここ20年くらいは使用されていないし、屋・根壁の大部分もなく、入口の扉も欠如している状況である。相談者が滞納地代を支払うように通知をしていたが、借地権者からは何らの応答がない。解除通知を出しても対応がないので、借地権者に立ち退いてもらいたい。
解決への流れ
建物収去土地明渡請求として訴訟提起した。理由としては、地代滞納によって信頼関係が破壊していること、作業所については併せて朽廃による借地権消滅を主張した。その結果、同請求は認容された。その後任意で立退きの話をしてみるも、応答がないため、強制執行の申立てをすることになり、結果、建物を収去して、土地の明け渡しを完了した。
一般的に借地権は強い権利とされ、簡単には借地権は消滅させられないとされています。そうは言っても、地代の滞納が続けば、当事者間の信頼関係が破壊されたとして、借地契約が解除される場合はあります。何か月滞納すれば借地契約が解除されるかどうかは一概には言えませんが、本件のように約1年も滞納があれば十分解除原因になりえますし、本件ではその他に賃貸人からの再三の催促があったにもかかわらず、無視し続けた点も考慮されました。また、借地権の消滅原因としては「朽廃」も考えられます。朽廃というのは、建物が社会的経済的な価値を失ったような場合で、単に古くなったというにすぎない場合では認められません。この朽廃による借地権の消滅の規定は実は旧借地法にあるのです。今は借地借家法ではないのかという疑問が出てくるかもしれませんが、この朽廃については、旧借地法の規定がそのまま適用されることになっています。