この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
私は、ある会社の株主ですが、会社の経営は、他の株主である代表取締役に任せていました。しかし、その代表取締役には、会社のお金を横領した疑いが生じました。もっとも、代表取締役は、会社の経営をやりたいようにやってしまっていたため、私は、会社の帳簿類にもアクセスできず、代表取締役の不正を追及する証拠収集に苦戦していました。
解決への流れ
一定割合以上株式を保有している株主には、会計帳簿閲覧謄写請求権という権利があることが分かりました。しかし、裁判所外において、会計帳簿の閲覧謄写を請求しても、代表取締役側が任意に会計帳簿を開示しない場合には、裁判所の手続によらざるを得ないため、仮処分手続という手続により、認容決定を得たうえ、会計帳簿類を開示させることができました。
100分の3以上の株式を有する株主等(少数株主といいます。)には、少数株主権という一定の権利が認められます。その中のひとつに、会計帳簿閲覧謄写請求権という権利があります。裁判所の手続を使わなくても、会社側が任意に会計帳簿を閲覧や謄写させればよいのですが、不正に及んでいる経営者は、任意に開示することはまずありません。会社法上、会社は、一定の場合には、会計帳簿閲覧謄写請求を拒否することができるとされています。不正に及んでいる経営者は、この拒否事由があるとして、開示を徹底的に拒否してきます。そこで、このような場合には、会計帳簿閲覧謄写請求仮処分という手続をとることになります。仮処分手続は、民事保全手続という手続であるため、非常に迅速な対応が必要となります。また、会計帳簿閲覧謄写請求の拒否事由があるとされると、会計帳簿閲覧謄写請求が認められないことになります。会計帳簿閲覧謄写請求は、代表取締役の解任や責任追及の訴えをするに先立ち、代表取締役の不正の証拠を集めるための手段となります。そこで、会計帳簿閲覧謄写請求は、これからの本丸となる訴訟に先立つ手段として非常に重要な手段となります。会計帳簿閲覧謄写請求の拒否事由は広く定められているため、これを突破するためには、商事紛争を専門とする弁護士へのご依頼が不可欠となります。