この事例の依頼主
20代 男性
相談前の状況
依頼者は、関東地方でビルの1階を借りて小売業を営んでいたのですが、ビルの設備に問題が発生し、1か月ほど営業ができなくなったのを契機に、もともと不振だった商売がより傾き、賃料を半年ほど滞納してしまいました。そして、家主から数回にわたり家賃の支払いを求められ、これを支払わなかったところ、家主から建物明渡と未払賃料の支払いを求める訴訟を起こされました。依頼者は、貯金がいくらかあるものの、これを元手に場所を変えて同じ業種の商売を始めたかったため、なんとか未払賃料を支払わない形での解決ができないかと考えていました。
解決への流れ
依頼者が、未払賃料の支払いを免除する形での和解を求めていたため、依頼者にはできるだけ早く退去できるよう準備することをお願いし、あわせて1か月間営業ができなかった原因であるビル設備の問題について、調査を尽くしました。その結果、ビル設備の問題は、管理会社の不適切な管理に起因するものであり、賃貸人である家主の賃借人である依頼者に対する賃貸借契約上の債務不履行といえるものであることを突き止めました。そのため、これらを交渉材料に、家主と交渉し、その結果、賃料の2か月分あった敷金返還請求権を放棄することと、退去も即時に行うことを条件に、未払い分の賃料と原状回復義務を免除する和解が成立しました。
建物の賃貸借契約期間中、貸主にとっても、また借主にとっても、お互いに不満を抱くことがあると思います。もちろん、円満に解決し、将来に向かってよい関係を築くことができればベストなのですが、不満をそのままにしていると、法的にも、感情的にも後戻りができないことになってしまうことがあります。このような事態を避けるために、賃貸借の相手方に不満を抱いた場合には、まず弁護士に相談することもお考えください。法律上の紛争だけではないと思いますが、ボタンの掛け違えは、すぐに処置をすれば、その後の大きな問題の発生を防ぐことができます。賃貸借契約は、長期間にわたることも多いことから、貸主と借主の間に良い関係を築いていきたいですよね。そのためには、早い時点での処置が重要だと思います。