この事例の依頼主
70代 男性
相談前の状況
薬局で日用品を万引きしたが、万引きを過去に繰り返し、窃盗や常習累犯窃盗ばかりで前科約20犯を有しており、刑務所への入所と出所を繰り返している。何故盗んだのか?との問いに対しては、「盗んじゃいけない、いけない、と思いつつ、気付いたら手に取ってしまっていた」。「盗むとき、ドキドキしたか?」、「成功したら、どこかすかっとしたところはあったか?」との問いに対しては、いずれも否定をしなかった。
解決への流れ
大してほしいわけでもないのに、悪いことだと分かっているのに、やってしまう。ドキドキ感、スリル感、そして達成感をどこかで感じてしまっているこのやりとりは、依存症の典型例の一つでもあります。わかっちゃいるけどやめられない依存症に陥っている可能性を指摘したところ、涙を流しながら、今まで誰からもこの話を聞いたことがなかったとのことでした。「もう辞めたい」「私、治るんですか?」と仰るので、「治る可能性はありますので、一緒に治療に取り組みましょう」と伝え、依存症治療の医療機関を紹介した。
窃盗をした場合には、当然ながら、被害弁償をして、できれば示談をする。被害回復が、情状として重要なことは、言うまでもありません。ただ、窃盗、特に軽微な万引きを何度も繰り返し、逮捕されても、刑務所に行っても治らない、という方については、盗癖(クレプトマニア)という依存症に陥っていて、「わかっちゃいるけど辞められない」状態に陥っている可能性をまず疑う必要があります。摂食障害を伴う方も多いです。この場合には、いくら刑務所に行って刑罰によって威嚇をしたところで、1人で買い物に出てしまえば、確実に繰り返します。買い物に一人で行かせるのを辞めさせなければなりませんし、専門治療を受けさせて、盗癖、依存症を治療しなければなりません。たった一度だし・・、などと軽く考えることは決してせず、一度捕まったということは、ご本人がどんなに否定していようが、何十回も繰り返していることは、スピード違反で捕まるケースを思い起こせば明白です。繰り返してやっていることを否定しているうちは、依存を認めていないので、確実に繰り返します。是非ご相談ください。