この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
交通事故による死亡事案であった。被告人は,第一審で選任された弁護人が無罪であるとの見立てを立てたことから弁護人のアドバイスに従って過失がないとして争ったものの,主張は退けられ,有罪になっただけでなく,徹底的に争ったことで反省の情がないとして実刑に処せられてしまいました。そこで,元刑事裁判官の私であれば,高裁で第一審の判断を覆してくれるであろうということで,控訴審では,第一審を担当した弁護士に頼まず,私に弁護を依頼してこられました。
解決への流れ
受任後,私が記録を精査したところ,およそ無罪になるような事案ではないことが判明しました。そこで,私は,依頼人に過失があることを説明し,控訴審では自白した方が良い旨説得し,かつ,反省の気持ちを示すため被害者の遺族へ見舞金をお渡しするようにていあんしました。私のアドバイスの結果,依頼人は自白することとし,さらに,見舞金をご遺族に支払おうとしましたが,拒否されたため,私の提案で,交通遺児を支援する団体に寄付することとしました。その後,控訴審で,依頼人は罪を認め,私は,依頼人が交通遺児を支援する団体への寄付したことなど反省していることを手厚く立証した結果,第一審が下した実刑判決は破棄され,執行猶予付きの判決に変更されました。
弁護人の見立てが見当違いであったりすると,およそ裁判所に認められない主張をし,その結果,反省の態度が見受けられないとして,刑が重くなることがあります。その点,元刑事裁判官である私であれば,主張が通る可能性やそのような主張をすることの不利益の程度を正確に把握することができますし,何がより効果的な情状弁護かも心得ておりますので,本件で依頼人が刑務所に行かなくて済んだのもそのような知見をフルに活かした結果と自負しております。