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[はじめに]刑事事件で逮捕されたり、起訴されたりした場合、被疑者・被告人には弁護人(弁護士)に弁護を依頼する権利があります。この弁護人には、大きく分けて「国選弁護人」と「私選弁護人」の二種類があります。どちらも被告人の権利を守るために活動する点では同じですが、選任方法や活動開始時期、費用などに違いがあります。ここでは、両者の違いを解説し、特に「私選弁護人」に依頼するメリットに焦点を当ててご説明します。国選弁護人とは?「国選弁護人(こくせんべんごにん)」とは、経済的な理由などで自分で弁護士を雇うことができない被疑者・被告人のため、または法律上必ず弁護人が必要とされる特定の事件(死刑や無期、長期3年を超える懲役・禁錮にあたる事件など)について、国(裁判所)が費用を負担して選任する弁護人のことです。(※資力によっては、後に費用負担を求められる場合もあります。)国選弁護人は、多くの場合、日本司法支援センター(法テラス)を通じて選任されます。原則として、被疑者段階では勾留された後に、被告人段階では起訴された後に選任を請求できるようになります。
[私選弁護人とは?]「私選弁護人(しせんべんごにん)」とは、被疑者・被告人本人やそのご家族などが、自ら探し、選び、直接契約を結んで依頼する弁護人のことです。費用は、依頼者が負担します。[国選弁護人と私選弁護人の主な違いと、私選弁護人に依頼するメリット]国選弁護制度は、憲法で保障された弁護人依頼権を実質的に確保するための重要な制度です。しかし、より迅速で、より手厚く、より自分に合った弁護活動を望む場合には、私選弁護人に依頼することに大きなメリットがあります。○活動開始時期の速さ:逮捕直後、あるいはそれ以前から動ける・国選: 原則として、被疑者段階では勾留された後(逮捕から最大72時間後)、被告人段階では起訴された後でなければ選任されません。つまり、逮捕直後の最も重要な初期捜査段階(取調べ対応、勾留阻止活動など)でのサポートが受けられない可能性があります。(※当番弁護士制度で一度だけ無料相談は受けられますが、継続的な活動はできません。)・私選: 逮捕された直後、あるいは逮捕される前の段階からでも、いつでも依頼することができます。これにより、逮捕直後の接見、取調べへのアドバイス、勾留請求を阻止するための活動、早期の示談交渉など、初動段階で迅速かつ効果的な弁護活動を開始できます。これは、早期の身柄解放や最終的な処分の決定に極めて大きな影響を与えます。○弁護士を自由に選べるか:専門性や相性で最適な弁護士を選べる・国選: 依頼する弁護士を選ぶことはできません。裁判所(法テラス)から割り当てられた弁護士が担当します。・私選: 自分やご家族の方が弁護士を探し、自由に選ぶことができます。刑事事件の経験が豊富か、特定の種類の犯罪(薬物、性犯罪、経済事件など)に強いか、説明が分かりやすいか、話しやすいかなど、自分の事件内容や性格に合った、最も信頼できる弁護士を選ぶことが可能です。納得のいく弁護士に依頼できることは、精神的な安心感にもつながります。○事件への注力度・利用できるリソース:より手厚いサポートが期待できる・国選: 国選弁護人も当然、職務として誠実に弁護活動を行いますが、限られた費用の中で多くの事件を担当している場合もあります。・私選: 依頼者との直接契約に基づき、費用に見合った、あるいはそれ以上の熱意と時間をかけて事件に取り組むことが期待できます。依頼者の要望に応じて、より頻繁な接見や打ち合わせ、独自の調査(証拠収集など)、きめ細やかな報告など、より手厚く、オーダーメイドに近い弁護活動を受けられる可能性が高まります。○対応範囲の広さ:起訴前・逮捕前の活動や民事損害賠償請求への対応も可能・国選: 主な活動範囲は、勾留後の被疑者弁護、または起訴後の被告人弁護です。・私選: 逮捕前の自首への同行、事件が警察に発覚する前の被害者との示談交渉など、国選弁護では対応できない早期段階での活動も可能です。また、刑事事件後に被害者から民事上の損害賠償請求を起こされた場合にも引き続き対応ができるため、改めて弁護士を探し相談する手間がかかりません。○コミュニケーションの密度:密な連携がとりやすい・私選: 依頼者と弁護士が直接契約しているため、一般的にコミュニケーションがより密接になりやすい傾向があります。進捗状況の報告や方針の相談などを、より頻繁かつ丁寧に行うことが期待できます。
[どちらを選ぶべきか? - 私選弁護人という選択肢]国選弁護制度は、経済的に余裕がない場合でも弁護士によるサポートを受けるための重要なセーフティネットです。しかし、もし費用的に可能であれば、・一刻も早く弁護活動を開始してほしい・刑事事件に精通した経験豊富な弁護士に依頼したい・自分と相性の良い、信頼できる弁護士を選びたい・より手厚く、きめ細やかなサポートを受けたいと考えるのであれば、私選弁護人への依頼を積極的に検討する価値は十分にあります。どちらの弁護人を選ぶかは、ご自身の状況や希望によって異なります。まずは、刑事事件を扱っている法律事務所に相談し、私選弁護人に依頼した場合の具体的な活動内容や費用について説明を聞いてみることをお勧めします。