この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
国選で受任した特殊詐欺の受け子(詐欺未遂罪で逮捕・勾留)の事例です。
解決への流れ
本件の特殊性としては、知らない人物から「金を取ってくるだけのバイト」を依頼され、依頼者は社会経験が未熟だったのでそれを特殊詐欺の受け子のアルバイトだと知らずに引き受けてしまったところ、被害者とは対面せずにそのまま逃げてしまったというものでした。本件の問題点としては、①承継的共同正犯が成立するか②詐欺の認識可能性があったのか③既遂結果実現のために何の行為もしていないのに実行の着手があったといえるのか④共犯関係の離脱が認められるのではないか等、依頼者に詐欺未遂の罪を問うために検察がクリアしなくてはいけない刑法理論上の問題点が多数ありました。そのような問題点を、過去の裁判例や研究者の論文等を引用した上で細かく指摘したところ、検察は依頼者を有罪にはできないと判断したためか不起訴処分となりました。
弁護士は法律の専門家ですから、理屈を詰めていくことが最大の仕事です。この件は、検察と法律上の問題点について激しく議論した結果、依頼者を罪に問うのが難しいと検察にわからせることができた事例です。なお、余談ですが、私は大学時代は刑法のゼミに所属していたため、刑法の研究者も多数知り合いにいますから、その研究者たちの力も借りながら最新の議論の状況を刑事弁護に反映させることができます。