10005.jpg
どうして「性犯罪」じゃない? 同僚女性のハチミツに「体液」入れた男性が問われた罪
2024年07月24日 13時40分
#性犯罪 #異物混入 #トイレ侵入 #わいせつ

職場の同僚女性が使うコップやハチミツ容器に自分の体液を入れたなどとして、器物損壊と建造物侵入の罪に問われた住宅メーカーの元派遣社員の男性に対して、岡山地裁は7月22日、懲役1年6カ月、執行猶予3年(求刑:懲役1年6カ月)の有罪判決を言い渡した。

共同通信などによると、男性は同僚の女性が使うコップなどに射精したり、職場の女子トイレに侵入したりして、その様子を撮影してX(旧ツイッター)に投稿。

「(女性が)ほとんど飲みきってえらい」「何も知らずに飲んでるの興奮した」などの文を書き添えていたという。

画像タイトル 写真はイメージ(株式会社デザインメイト / PIXTA)

常軌を逸した行為だが、男性が問われたのは器物損壊と建造物侵入の罪で、裁判では執行猶予付きの判決となった。

これに対して、SNS上には「女性に加害してるのに執行猶予で終わるのはなんでなん?」「精子混入した結果女性が飲んだことは罪に問えなかったの?」などと疑問や批判のコメントがあふれている。

一見、性的な事柄が関係している事件のようにもみえるが、なぜ「性犯罪」として裁かれなかったのだろうか。刑事事件に詳しい岡本裕明弁護士に聞いた。

職場の同僚女性が使うコップやハチミツ容器に自分の体液を入れたなどとして、器物損壊と建造物侵入の罪に問われた住宅メーカーの元派遣社員の男性に対して、岡山地裁は7月22日、懲役1年6カ月、執行猶予3年(求刑:懲役1年6カ月)の有罪判決を言い渡した。

共同通信などによると、男性は同僚の女性が使うコップなどに射精したり、職場の女子トイレに侵入したりして、その様子を撮影してX(旧ツイッター)に投稿。

「(女性が)ほとんど飲みきってえらい」「何も知らずに飲んでるの興奮した」などの文を書き添えていたという。

画像タイトル 写真はイメージ(株式会社デザインメイト / PIXTA)

常軌を逸した行為だが、男性が問われたのは器物損壊と建造物侵入の罪で、裁判では執行猶予付きの判決となった。

これに対して、SNS上には「女性に加害してるのに執行猶予で終わるのはなんでなん?」「精子混入した結果女性が飲んだことは罪に問えなかったの?」などと疑問や批判のコメントがあふれている。

一見、性的な事柄が関係している事件のようにもみえるが、なぜ「性犯罪」として裁かれなかったのだろうか。刑事事件に詳しい岡本裕明弁護士に聞いた。

●判例は性的な性質の有無や程度を考慮

今回の事件が性犯罪として扱われなかったのは、問題となった行為が「わいせつな行為」と認められなかったことに起因するといえます。

どのような場合に「わいせつな行為」と認められるのかについては、法改正前の強制わいせつ罪の成否が問題となった事件で、最高裁大法廷(平成29年11月29日)が次のように判示しています。

「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で…その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断(する)」

ただし、この性的性質の有無や程度は、不同意わいせつ罪など、性犯罪に対する刑罰が極めて重く定められていることもあり、厳格に判断されています。

画像タイトル 写真はイメージ(OlhaSolodenko / PIXTA)

●性的部分への直接の接触なし→わいせつ行為の判断難しく

たとえば、電車内などの混雑した状況に乗じて体液を直接かけるような行為について、器物損壊罪や暴行罪で処理される事件が多く見られるように、身体の性的な部分へ直接の接触を伴わない行為については、「わいせつな行為」にあたらないと判断されることが多いのです。

ですから、女性に対する性犯罪ではなく、体液が付着したことによってコップが利用できなくなった点を捉えて、器物損壊の罪で起訴したと思われます。

●健康への悪影響を証明できないと傷害罪成立も厳しい

「わいせつな行為」にあたらないとしても、コップを被害品とする犯罪として扱うよりも、体液を飲まされた点に着目すべきようにも感じます。

しかし、「わいせつな行為」に該当しない以上、性犯罪を成立させることは困難です。

また、体液を摂取したことで健康状態が著しく悪化したと証明することもできない場合には、傷害罪の成立も認めることができません。

捜査機関としては、以上のような観点から器物損壊や建造物侵入という罪名で起訴せざるを得なかったのではないかと思います。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る