10045.jpg
旧優生保護法「強制不妊手術」の男性、妻に40年以上話せず「不幸にしてしまった」…国を提訴
2018年05月17日 11時46分

今から61年前、旧優生保護法による不妊手術を強制されたことで、精神的苦痛を受けたとして、東京都内在住の男性(75)が5月17日、損害賠償3000万円をもとめる国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。男性はこの日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて「人生を返してください」と訴えた。

今から61年前、旧優生保護法による不妊手術を強制されたことで、精神的苦痛を受けたとして、東京都内在住の男性(75)が5月17日、損害賠償3000万円をもとめる国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。男性はこの日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて「人生を返してください」と訴えた。

●「何の説明もなく不妊手術を受けさせられた」

訴状などによると、男性は1957年(当時14歳ごろ)、宮城県内の病院で、何の説明もなく、旧優生保護法にもとづく不妊手術を受けさせられた。当時、入所していた教護院(児童自立支援施設)の先輩から「子どもが生まれなくする手術だ」と聞いたという。

今年1月、宮城県内の女性が仙台地裁に提訴した報道を受けて、弁護団の電話相談に問い合わせた。今年3月、宮城県の個人情報開示の手続きをおこなった結果、保管期間が過ぎて廃棄されたため、手術記録は存在しないとされた。

男性は医師による意見書をもらったうえで、今回の提訴に踏み切った。代理人をつとめる関哉直人弁護士は会見で、「(旧優生保護法は)当時から明らかに憲法に反する法律で、しかも十分に吟味して手術決定がされていない」と説明した。男性側は、手術によって、長年生活上の苦痛を受けたと主張している。

●男性「一人の女性を不幸にしてしまった」

男性は1972年、結婚して仲睦まじい夫婦関係をつづけていたが、子どもをつくれない身体であることを伝えることができず、約5年前、妻が亡くなる直前になって、ようやく打ち明けることができたという。結婚から40年以上経っていた。男性は「一人の女性を不幸にしてしまった」と振り返った。

「心から自分の妻に謝罪した。妻は周囲から『なんで子どもが出来ないのか?』と言われるたびにどんなつらい思いをしたかわからない」(男性)

●「手術に関わった人は表に出て、真実を語ってほしい」

旧優生保護法にもとづく強制不妊手術をめぐっては、この日、北海道と宮城県でも同じような国家賠償訴訟が起こされた。今年1月末に仙台地裁に提訴した宮城県の女性のケースを含めて計4件となった。

強制不妊手術は全国で約1万6500件あったとされるが、全体の2割ほどしか記録が残されていない。男性はそんな現状の中で、自分が裁判することで、救済につながる動きにつなればと考えている。

男性は「一人で傷ついている人が大勢いる。その人たちの思いを込めて、裁判をすすめていきたい。手術に関わった人は表に出て、真実を語ってほしい。名乗り出てない人も、勇気を出して、裁判に出てほしい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る