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最近のオススメ本は「宇宙法入門」です~弁護士会館「名物書店長」インタビュー(下)
2015年02月15日 11時40分

法律の専門的な勉強はしてこなかったという「弁護士会館ブックセンター」名物店長の長田和美さん。書店の実地演習で法律知識を身につけてきたが、欠かさないのは朝の日経新聞。意外に法律ネタが詰まっているのだと話す。

法律の専門的な勉強はしてこなかったという「弁護士会館ブックセンター」名物店長の長田和美さん。書店の実地演習で法律知識を身につけてきたが、欠かさないのは朝の日経新聞。意外に法律ネタが詰まっているのだと話す。

●実務とは直接関係ない「ハウツー本」も

――ここで働いてきた15年間で、何か売れなくなった書籍はありますか?

体系書全般の売れ行きが落ちていますよね。全く売れないわけではないですけど、ゆっくり読む余裕がないからだと思います。改定があれば出ますが・・・。

前は、体系書をきちんと置いておかないと「あれ、ないの?」と言われることがありましたが、いまは、体系本と実務書の割合は「3対7」くらいで、実務書がより多く売れていますね。

――書棚を見渡すと、「スマホ活用術」など、弁護士の実務とは直接関係のなさそうな「ハウツー本」も目につきますね。

自己啓発のような本も多くあります。「法律家のための」とかタイトルに書かれていたりしますが、一般の人が読んでも十分に活用できる内容で、面白いんですよ。多岐にわたってよく作るなあ、と関心してしまいますよね。

私が書棚に並べる基準は「自分がもし弁護士だったら面白そうだな」と思うもの、私が「面白いな」と思うものです。体系本も売れますけど、ハンドブックやマニュアル、入門書のような書籍も、うちは多く置いています。

いくつかご紹介しますが、タイトルをみるだけで、内容はよく伝わりますよね。

『法律家のためのスマートフォン活用術』(日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会編著/2500円/第一法規株式会社)

『新規顧客をバッチリつかむ 士業のためのホームページのつくりかた』(芝田弘美著/中央経済社/2200円)

『弁護士10年目までの相談受任力の高め方』(中里妃沙子・高橋恭司・大澤一郎・大山滋郎・藤井聡著/レクシスネクシス・ジャパン/2400円)

『弁護士独立のすすめ』(北周士著/第一法規/2500円)

『依頼の絶えないコンサル・士業の仕事につながる人脈術』(東川仁著/同文館出版/1400円)

●「自転車での配達」はブラック企業以上の過酷さ?

――ところで、弁護士会館ブックセンターは配達もするそうですが、「Amazon以上の速さ」との評判もあるようですね。

いまのブックセンターがここに出店する前、別の書店さんがあったんです。そこが閉店を決め、入札でブックセンターが入りました。その条件が、前書店と同じ仕事を続けること。その1つが「配達サービス」だったんです。

――具体的には、配達サービスとは、どんな内容ですか?

ルートセールスですね。『判例時報』のような定期購読をいただいている雑誌に加えて、注文いただいた書籍をお届けしています。いつも配達に行っている事務所さんだと、「急ぎで欲しいんだけど」とリクエストを受けることもありますが、事情が許す限り、当日配送にも対応しますよ。ただ、当日行けるのは日比谷、虎ノ門くらいの距離ですが。

――どのくらいの事務所とお付き合いがあるんですか?

おそらく、200を超えると思います。

――車でも時間がかかりそうですね。

いえ、車ではなく、自転車です。六本木や新宿くらいまでなら、お届けしています。ですから、この職場は過酷ですよ。寒いときだって、暑いときだって、天気も関係ありませんからね。

スタッフは5人いますが、外商や内勤と分けずに、配達を含めて、オールマイティーに働いてくれています。仕事のキツさはブラック企業を超えているかもしれませんね・・・。

――長田さんはこのお店に勤めて何年くらいになりますか。

この店に勤めて15年となります。社会人のスタートは大学の生協でした。文庫や法律の棚を担当し、そこで書店員としての基礎を学びました。法律といっても、参考書や学生向けの本ですから、取り扱っているものは今と全く違いますけど。

その後、本の取次に勤め、弁護士会館へブックセンターが出店するにあたり、「お店をやってね」と言われて、お店を任されたんです。

――どんなところに大変さがありましたか。

実務家向けの品揃えは大変でした。それから、この15年間、とにかく法改正が多かったんです。民事再生法などの新しい法律が、ある日できる。私の場合、法律の知識はないわけですから、「何それ?」というところから始まって勉強していきます。15年経つと、法改正があればどんなふうに進んでいくのか、その流れがなんとなくつかめるようになりました。

――お客さんからは、どんな声が寄せられていますか。

最初のころは「置いている本が、前と違うね」とよく言われました。法律系の書店ごとに個性があると思いますが、私は硬くて真面目な本だけでなく、法律に関係する内容であれば、柔らかくて自分が面白いと思える一般の書籍も、あわせて置くようにしています。

ときどき、「こんな案件を依頼されているんだけど、何かない?」と聞かれることもあります。私で良いんでしょうか、という気持ちですが、選んでいます。

●「法律に追いつくのはとにかく大変!」

――客のほとんどが法律の専門家という書店では、店員さんにも法律知識が欠かせないという大変さがあると思います。長田さんは、どんなふうに勉強しているんでしょうか。

大変ですよ。法律やルールは日々、変わっていきますから、追いついていくのが大変です。

編集者に聞いたり、あとは毎朝、通勤中に日経新聞をくまなく読むことですね。法務コーナーはもちろん、そのほかの面も読みます。先日も、社会面にあった記事に、お金があるのに欲しくもない物の万引きを繰り返す人がいて、それは精神疾患だと書いてありました。そうすると、法律だけでなく、依存症や認知症、精神的な病をテーマにした書籍も置く必要があるな、とわかります。

――最後になりますが、いまオススメの本、注目している作品はありますか。

すでに売れ筋に入っている作品も含めますが、以下の6作品です。

『弁護士業務の勘所 弁護士という仕事をもっと楽しむために』(官澤里美著/第一法規

/2500円)

『和解交渉と条項作成の実務 問題の考え方と実務対応の心構え・技術・留意点』(田中豊著/学陽書房/3000円)

『契約書が楽に読めるようになる 英文契約書の基本表現』(牧野和夫著/日本加除出版/2400円)

『労働事件 立証と証拠収集』(ロア・ユナイテッド法律事務所編著/創耕舎/3500円)

『新・金融商品取引法読本』(河本一郎・大武泰南・川口恭弘著/有斐閣/3700円)

『宇宙ビジネスのための宇宙法入門』(小塚荘一郎・佐藤雅彦著/有斐閣/2600円)

最後の『宇宙法』は変わりダネですが、大真面目に作っています。出版社の編集者の話を聞いていたら、たしかに面白そうだと。

昔は国策で取り組んでいた宇宙分野に、これからは民間の企業が進出していく時代なのかな、と。著者は宇宙法の第一人者で、権利関係はどうなるのか、などが書かれています。売れ行きも順調です。

弁護士会館「名物書店長」インタビュー(上)

(弁護士ドットコムニュース)

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