10129.jpg
マンションから飛び降りて死亡した母子4人――無理心中は「殺人」ではないのか?
2014年06月27日 11時28分

千葉県八千代市のマンション前で6月中旬、母子4人が一緒に死んでいるのが見つかった事件は、大きな衝撃を与えた。報道によると、母親の荷物が14階建てのマンション最上階で見つかり、警察はマンションから飛び降りた「無理心中」とみて調べているという。

亡くなったのは35歳の母親と、小学2年生の長男、小学1年の長女、2歳の次男の合わせて4人。転落したとみられるころ、付近の住民たちは、子どもたちの「異常な大声」や大きな衝突音を聞いていたそうだ。

仮に警察の見立て通りだとしたら、おそらく母親は極限まで追い詰められていたのだろう。しかし、それでも、子どもたちも一緒に死ぬ理由にはならない。子どもと無理心中した親は、「殺人罪」にならないのだろうか。大和弘幸弁護士に聞いた。

千葉県八千代市のマンション前で6月中旬、母子4人が一緒に死んでいるのが見つかった事件は、大きな衝撃を与えた。報道によると、母親の荷物が14階建てのマンション最上階で見つかり、警察はマンションから飛び降りた「無理心中」とみて調べているという。

亡くなったのは35歳の母親と、小学2年生の長男、小学1年の長女、2歳の次男の合わせて4人。転落したとみられるころ、付近の住民たちは、子どもたちの「異常な大声」や大きな衝突音を聞いていたそうだ。

仮に警察の見立て通りだとしたら、おそらく母親は極限まで追い詰められていたのだろう。しかし、それでも、子どもたちも一緒に死ぬ理由にはならない。子どもと無理心中した親は、「殺人罪」にならないのだろうか。大和弘幸弁護士に聞いた。

●「無理心中」と「心中」の差は?

「八千代市の事件は、大変悲しい事件です。特に『異常な大声』を出していたという子どもたちのことを想像すると、胸が痛みます」

大和弁護士はこう前置きしたうえで、次のように説明する。

「無理心中を辞書でひくと、『死ぬ意思のない相手を無理に道連れにして自殺すること』などと記載されています。道連れにされた相手は、殺害されたことになります。つまり、無理心中は、『殺人行為』にほかなりません。

他方で、『心中』という言葉もあります。こちらは、『愛する二人が合意の上で一緒に自殺すること』です。この場合は殺人罪にはならず、自殺関与罪・同意殺人罪になります」

その差はどこにあるのだろうか?

「『無理心中』と『心中』の違いは、亡くなった被害者が、自分の生命という利益を放棄しているかどうかです」

●子どもたちが「自らの死」に同意するとは考えられない

すると、母親が小さな子どもと一緒に飛び降り、全員死亡したとすれば、どうなるのか?

「小学生以前の幼い子どもたちが、自分が死亡することに同意していたり、死ぬことを受け入れる能力があったとは考えられません。ですから、親の行為は、殺人罪に該当すると思います。

ただし、母親も死亡しているので、仮に捜査で容疑が強まったとしても、被疑者死亡で不起訴処分となるでしょう」

確かにそれほど幼い子どもたちが、「自らの死」を十分に理解しているとは言いがたいだろう。

「無理心中は、無理やり被害者を殺しているわけです。ですから、行為者が自殺をしようとしまいと、殺人であることに違いはありません」

このように、大和弁護士は指摘したうえで、「ニュースでも、『無理心中』などという婉曲的な表現を用いず、端的に『殺人』であると報じるべきなのではないでしょうか」と疑問を投げかけていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る