10256.jpg
「アート引っ越し」給料から勝手に「事故賠償金」を天引きされた…元従業員が提訴
2017年10月10日 19時24分

「アート引っ越しセンター」で知られる引っ越し会社グループ「アートコーポレーション」で働いていた元従業員の男性3人が10月10日、同社と同社の労働組合に、未払い残業代や、給料から天引きされた引っ越し事故の賠償金、天引き同意のない組合費の返還など計約376万円の支払いを求め、横浜地裁に提訴した。

男性らは、

(1)同社がつけた賃金台帳と男性らが計算した残業代の差額の支払い

(2)「引っ越し事故賠償制度」に基づいた賠償金の返還

(3)制度があると知らされていなかった通勤手当の支払い

(4)業務連絡で使用した私用の携帯電話代金の支払い

(5)天引き同意がなかった労働組合費の返還

を求めている。

「アート引っ越しセンター」で知られる引っ越し会社グループ「アートコーポレーション」で働いていた元従業員の男性3人が10月10日、同社と同社の労働組合に、未払い残業代や、給料から天引きされた引っ越し事故の賠償金、天引き同意のない組合費の返還など計約376万円の支払いを求め、横浜地裁に提訴した。

男性らは、

(1)同社がつけた賃金台帳と男性らが計算した残業代の差額の支払い

(2)「引っ越し事故賠償制度」に基づいた賠償金の返還

(3)制度があると知らされていなかった通勤手当の支払い

(4)業務連絡で使用した私用の携帯電話代金の支払い

(5)天引き同意がなかった労働組合費の返還

を求めている。

●アート社、未払い残業代の差額認める

訴状などによると、今回提訴したのはアート引越センター横浜都筑支店の元社員2人と元アルバイト1人。いずれも2011年4月〜2013年4月の間に入社し、2016年8月〜2017年5月の間に退社した。

社外の労働組合を通じた未払い残業代に関する団体交渉の中で、同社は2017年6月13日、「当社が把握していた労働時間と実際の勤務時間に異なるところがあったため、正しい勤務実績に基づいて賃金を算定した場合の不足分を支払う」と差額があることを認めた。しかし、その後の労基署を交えた交渉においても、未払い残業代などの支払い範囲は一定程度とし、さらに内容を口外しないといった条件がつけられたため、訴訟に至ったという。

●「事故賠償金」を給料から勝手に天引き、足りない分は追加請求

提訴後、元社員の男性(24)と代理人の指宿昭一弁護士らが厚労省記者クラブで会見し、同社の「引っ越し事故賠償制度」の問題点について説明した。

これはベテランや中堅の正社員、常勤アルバイトなどの引っ越し作業のリーダーに対して、1件の事故につき1人3万円を上限に損害賠償金を負担させる同社の制度だ。顧客のクレームがあり会社が賠償金を支払った場合、ほぼ自動的にリーダーが賠償金を支払わされていたという。

男性らがいた横浜都筑支店では、同意がないまま給料から「引っ越し事故積立金」として勝手に天引きされていた。男性によると、1日500円の積み立てだったが、それで賄えない分については月1回の現場会議で金額を提示され、リーダーで割り勘して支払っていたという。

指宿弁護士は、「とりわけ重過失があったり、故意に落としたような事故であれば、支払いはやむを得ないが、同社が請求していたのは通常の業務で生じている損害だ。こういったものは使用者側が支払うべきで、リーダーの責任として請求するのはおかしい」と主張した。

●勝手に天引き「放っておくことができない」

会見に参加した元社員の男性(24)=横浜市=は、「毎月過酷な残業をして心身ともに疲れ切って、毎日睡眠不足に襲われている中で、物を壊したらお金を払えということがずっと続いていた。(事故賠償金について)自分以外にも、かなり多くの額を勝手に天引きされている人がいる。『放っておくことができない』と皆で声をあげて、訴訟を提起した」と話した。

また、今回の裁判とは別に、数か月以内に原告3〜4人による、「引っ越し事故賠償制度」に基づく賠償金の返還請求事件の提訴も予定しているという。指宿弁護士は、「同社で全国的に行われている制度のため、今後訴訟が大きく広がっていく可能性がある」と話した。

アートコーポレーション広報部は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「訴状が届いておらず、内容がわかりかねるためコメントできない」とコメントした。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る