10341.jpg
熊本地震で家具固定グッズ大売れ…立ちはだかる「壁の穴あけ禁止」ルール
2016年04月21日 09時51分

4月14日から続く熊本地震を受け、家具の転倒防止グッズに注目が集まっている。報道などによると、九州圏内に限らず品薄になる店が出始めているようだ。

家具の固定については、費用を助成する自治体もあり、特に、壁にネジやクギを打って固定する器具が有効とされている。

しかし、賃貸住宅は壁の穴あけを禁止するところがほとんどだ。ツイッター上には熊本地震を受けて、「賃貸住宅の家具固定について、ひどく悩む」「固定したいのに賃貸でなにもできなくて不安」といった書き込みも見られる。

原状回復が困難という貸主側の事情もあるだろうが、家具の転倒防止のためでも、賃貸住宅の壁に穴をあけてはいけないのだろうか。久保豊弁護士に聞いた。

4月14日から続く熊本地震を受け、家具の転倒防止グッズに注目が集まっている。報道などによると、九州圏内に限らず品薄になる店が出始めているようだ。

家具の固定については、費用を助成する自治体もあり、特に、壁にネジやクギを打って固定する器具が有効とされている。

しかし、賃貸住宅は壁の穴あけを禁止するところがほとんどだ。ツイッター上には熊本地震を受けて、「賃貸住宅の家具固定について、ひどく悩む」「固定したいのに賃貸でなにもできなくて不安」といった書き込みも見られる。

原状回復が困難という貸主側の事情もあるだろうが、家具の転倒防止のためでも、賃貸住宅の壁に穴をあけてはいけないのだろうか。久保豊弁護士に聞いた。

●防災目的でも穴あけはダメ?

「地震による負傷者の3〜5割は家具の転倒・落下が原因であるとも言われ、家具等の転倒防止策に関心が向けられています。しかし、賃貸住宅における転倒防止策には、問題が指摘されています」

いったい、どんな問題があるのか。

「借り手は、『善管注意義務』や『用法遵守義務』を負っているため、賃貸人の許可なく、建物を損傷すると『賃貸借契約違反』になってしまうのです。そのため、床や壁に穴を開けるなどして転倒防止器具を設置することは、原則できません。

国土交通省が公表している『賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を見てみましょう。壁等の画びょう、ピン等の穴や、エアコン設置による壁のビス穴については、『一般的に生活する上で必要な行為』により生じた損傷(通常損耗)であるとして、原状回復義務を負わないこととなっています。つまり、これらの穴であれば空けてもよいということです」

それならば、家具の転倒防止策も、「一般的に生活する上で必要な行為」に含まれるのではないか。

「このガイドラインでは、床や壁の損傷を伴う家具等の転倒防止策は、『善管注意義務違反』による損傷に分類されています。『予め、賃貸人の承諾、または、くぎやネジを使用しない方法等の検討が考えられる』とあるので、賃貸人の許可なく行うことは禁じられていると考えてよいでしょう」

これだけ首都圏直下型や東南海地震への備えが叫ばれているなか、クギやネジを使って効果のある転倒防止策をとることは当たり前ではないだろうか。

「そうですね。賃貸住宅では、まずは賃貸人に対して、家具等の転倒防止策のために床や壁に穴を開けることを許可してもらうよう働きかけるべきでしょう。その際に、設置する器具や原状回復の方法について話し合っておけば、退去時のトラブルを避けられるはずです」

もし、許してもらえなかったら、どうしたらいいだろう。

「許可が取れない場合、ほかの対策を取るほかありません。たとえば、穴を開けない転倒防止器具をなるべく効果的に設置するといった方法が考えらます。このほか、転倒するような家具を置かない、転倒してもケガをしないような位置に置くといった工夫もできるでしょう。

ただ、現在各方面で、賃貸住宅における家具等転倒防止策の重要性が叫ばれています。今後は、エアコン設置による壁のビス穴等と同様に、『一般的に生活する上で必要な行為』により生じた損傷(通常損耗)と認識される可能性も十分に考えられます。

また、借り手とのトラブルを防ぐためにも、冷蔵庫など設置場所がおおむね決まっているものについては、あらかじめ物件に転倒防止器具を設置する流れも、徐々に進んでくるのではないでしょうか」

久保弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る