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所得や年金の個人情報を一元管理 「マイナンバー制度」ってどうなの?
2013年05月24日 16時52分

国民一人一人に番号を割り振る「マイナンバー制度」を定めた社会保障・税の共通番号法は5月24日、参院本会議で可決、成立した。2016年1月から制度の運用がスタートする予定だ。

マイナンバー制度は、国民一人一人の所得や納税実績、社会保障に関する個人情報を1つの番号で管理しようというもの。それぞれの国民の所得状況や年金、医療などの受給実態を正しく把握して、効率的な社会保障給付を実現することが目的とされている。

この制度が始まると、納税や社会保障に関する情報が一元的に管理できるようになる。行政に役立つだけでなく、国民にとっても、たとえば、年金や介護保険の納付状況がインターネットで確認できたり、確定申告の手続きがいまよりも簡単にできるようになる、といったメリットが考えられる。

一方で、所得や健康状態といった重要な個人情報が流出したり、他人に悪用されたりする危険性が指摘されている。マイナンバー制度の運用にあたって、政府はどのような点に気をつけるべきだろうか。また、国民が注意すべき点はなんだろうか。日弁連情報問題対策委員会の副委員長をつとめる水永誠二弁護士に聞いた。

●マイナンバー制度には、さまざまな「リスク」がある

「この制度が掲げる目的を実現するための核心は、マイナンバーを納税者番号として使って『正確な所得把握』をし、それに応じて社会保障を『効率的』に給付するというところにあるはずです。しかし、その『正確な所得把握』ができないことは、今や政府自身が認めています」

このように水永弁護士は、マイナンバー制度の実効性について、疑問を投げかける。逆に、マイナンバー制度の導入にはさまざまなリスクがあると指摘する。

「たとえば、個人情報にマイナンバーがつけられるようになれば、それらの情報が番号で確実に名寄せされて、プライバシーが『丸裸』にされてしまう危険があります。

また、悪意の第三者に成りすまされ、その際の情報が自分のものとして登録・名寄せされ、知らないうちにブラックリストに載せられてしまうような危険もあります。これはすでに、アメリカや韓国などで深刻な社会問題となっています。

さらに、マイポータルにある個人情報をのぞき見されたり、不正操作されたりする危険が飛躍的に高まることも考えられます」

●マイナンバー制度に伴う「リスク」を回避するための方法は?

このようなリスクをできるだけ回避するためには、どうしたらいいのだろうか。水永弁護士は次のように指摘する。

「このような危険性を防止するには、『利便性』の追求に偏ることなく、マイナンバーを広範的な分野で使う『共通番号』にしないことが必要です」

では、一般の国民がとれる対策はあるのだろうか。

「マイナンバーが記載されたカードを身分証明書として使うことは止めたほうがいいでしょう。国民としては、勤務先などマイナンバーの活用が法律で決められたところ以外では、カードを極力使わないようにするのが望ましいといえます」

水永弁護士はこのようにアドバイスしている。情報の一元化は利便性や効率性というメリットをもたらすと同時に、万が一セキュリティが破られた場合に、多大な損害が生じるリスクがある。そのようなリスクに備えるために、我々としては、マイナンバーがどのような場面で使われようとしているのか、注意を払っておく必要があるといえるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

国民一人一人に番号を割り振る「マイナンバー制度」を定めた社会保障・税の共通番号法は5月24日、参院本会議で可決、成立した。2016年1月から制度の運用がスタートする予定だ。

マイナンバー制度は、国民一人一人の所得や納税実績、社会保障に関する個人情報を1つの番号で管理しようというもの。それぞれの国民の所得状況や年金、医療などの受給実態を正しく把握して、効率的な社会保障給付を実現することが目的とされている。

この制度が始まると、納税や社会保障に関する情報が一元的に管理できるようになる。行政に役立つだけでなく、国民にとっても、たとえば、年金や介護保険の納付状況がインターネットで確認できたり、確定申告の手続きがいまよりも簡単にできるようになる、といったメリットが考えられる。

一方で、所得や健康状態といった重要な個人情報が流出したり、他人に悪用されたりする危険性が指摘されている。マイナンバー制度の運用にあたって、政府はどのような点に気をつけるべきだろうか。また、国民が注意すべき点はなんだろうか。日弁連情報問題対策委員会の副委員長をつとめる水永誠二弁護士に聞いた。

●マイナンバー制度には、さまざまな「リスク」がある

「この制度が掲げる目的を実現するための核心は、マイナンバーを納税者番号として使って『正確な所得把握』をし、それに応じて社会保障を『効率的』に給付するというところにあるはずです。しかし、その『正確な所得把握』ができないことは、今や政府自身が認めています」

このように水永弁護士は、マイナンバー制度の実効性について、疑問を投げかける。逆に、マイナンバー制度の導入にはさまざまなリスクがあると指摘する。

「たとえば、個人情報にマイナンバーがつけられるようになれば、それらの情報が番号で確実に名寄せされて、プライバシーが『丸裸』にされてしまう危険があります。

また、悪意の第三者に成りすまされ、その際の情報が自分のものとして登録・名寄せされ、知らないうちにブラックリストに載せられてしまうような危険もあります。これはすでに、アメリカや韓国などで深刻な社会問題となっています。

さらに、マイポータルにある個人情報をのぞき見されたり、不正操作されたりする危険が飛躍的に高まることも考えられます」

●マイナンバー制度に伴う「リスク」を回避するための方法は?

このようなリスクをできるだけ回避するためには、どうしたらいいのだろうか。水永弁護士は次のように指摘する。

「このような危険性を防止するには、『利便性』の追求に偏ることなく、マイナンバーを広範的な分野で使う『共通番号』にしないことが必要です」

では、一般の国民がとれる対策はあるのだろうか。

「マイナンバーが記載されたカードを身分証明書として使うことは止めたほうがいいでしょう。国民としては、勤務先などマイナンバーの活用が法律で決められたところ以外では、カードを極力使わないようにするのが望ましいといえます」

水永弁護士はこのようにアドバイスしている。情報の一元化は利便性や効率性というメリットをもたらすと同時に、万が一セキュリティが破られた場合に、多大な損害が生じるリスクがある。そのようなリスクに備えるために、我々としては、マイナンバーがどのような場面で使われようとしているのか、注意を払っておく必要があるといえるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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